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【基礎知識】感謝の構造 -感謝にはどんな種類がある?

近年、感謝についての研究が国内外で注目を集めています。

感謝研究の中では、感謝にはどのような種類があり、どのような構造になっているか研究されています。今回は、「感謝の構造」について紹介したいと思います。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。2024年5月から6月にかけて、アプリ用に執筆した記事で毎日更新しています。


感謝を感じる5つの状況

感謝の構造について体系的にまとめた研究では、私たちが感謝を感じる状況には以下の5つの種類があるとしています。

1.被援助
個人が困っているときに他者から助けられる
例)業務で悩んでいるとき、上司が相談にのってくれた / 資料を床に落としてしまったとき、同僚が拾うのを手伝ってくれた

2.贈物受領
個人が特に困っていないときに他者から何らかの資源提供を受ける
例)誕生日にプレゼントをもらった / 上司が出張のお土産をくれた

3.他者負担
他者から直接支援を受け取るのではなく、他者に負荷がかかったことによって個人が間接的に支援を受ける
例)同僚がチームメンバーの分の必要な申請をしてくれた / 誰かが共用の棚を整理してくれた

4.状態好転
個人をとりまく何らかの状態が好転する
例)ずっと欲しくて探していた本が見つかった / 体調が悪い日が続いたが回復した

5.平穏
個人をとりまく状態に一見大きな変化がない
例)朝淹れたコーヒーが美味しかった / 特にトラブルなく一日の業務が終わった

これらの感謝の状況うち、「他者負担」「状況好転」「平穏」の3つは、「被援助」や「贈物受領」に比べて感謝を認識しにくいとされています。

これら3つ感謝の状況は、個人への影響が間接的であったり、影響をもたらす他者やものごとが明確に存在しないので、意識しないとなかなか感謝を認識しにくいのかもしれません。

感謝で感じる2つの感情

また、感謝にどのような感情を伴うかについても研究されており、以下の2つの感情が挙げられています。

1.満足感:「満足」「幸せ」「喜び」などの肯定的感情

2.申し訳なさ:「すまなさ」「申し訳なさ」「恐縮」などの負債感情

感謝を感じる際に、「満足感」を感じるとともに、一定の「申し訳なさ」も感じるのは、感覚的にも納得いく気がします。

「感謝状況」と「感謝感情」の関係

さらに、5つの「感謝状況」と2つの「感謝感情」の関係についても見てみましょう。

感謝感情のうち、「満足感」は5つの感謝状況のすべてで体験されることが、調査から明らかになっています。

「満足感」の感じさすさ
「贈物受領」>「状況好転」>「被援助」>「平穏」>「他者負担」

一方で、「申し訳なさ」は「被援助」「贈物受領」「他者負担」の3つの感謝状況でのみ体験されると報告されています。

「申し訳なさ」の感じやすさ
「他者負担」>「被援助」>「贈物受領」

それぞれの感情の感じやすさについても比べてみると、「贈物受領」「被援助」「他者負担」の満足感と申し訳なさの感じやすさの順番が逆になっていることが分かります。「贈物受領」は「満足感」を感じやすく、「他者負担」は「申し訳なさ」を感じやすいと言えます。

「申し訳なさ」を減らしてウェルビーイング向上?

感謝に伴う「申し訳なさ」は感謝がウェルビーイングを高める効果を弱めてしまうと考えられています。

「申し訳なさ」を強く感じやすい他者に負担をかけてしまった状況には「ありがたい」「おかげで助かった」のようなポジティブな感情を意識してみたり、「申し訳なさ」を感じにくい「状況好転」「平穏」な感謝を日常の中で探してみたりすることが、感謝を通してウェルビーイングを高めるときのコツになるのかもしれません。

(筆者:菅原)

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参考文献

  • 蔵永瞳, & 樋口匡貴. (2011). 感謝の構造―生起状況と感情体験の多様性を考慮して―. 感情心理学研究, 18(2), 111-119.

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