NECソリューションイノベータ株式会社

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NECソリューションイノベータは、NECグループの社会価値創造をICT(情報通信技術)で担う国内最大規模のシステム・インテグレータです。研究開発部門が組織のウェルビーイングについて研究結果や最新トレンドを発信します。 問い合わせ note_necsi@nes.jp.nec.com

マガジン

  • ウェルビーイング研究

    ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。

  • 感謝研究

    感謝の研究に関する記事をまとめています。記事は、スマホアプリNEC Thanks Cardに掲載した内容を修正して転載したものです。

リンク

最近の記事

感謝の気持ちと資源消費行動の関係

2022年1月に世界経済フォーラムにより公開された「2022年版グローバルリスク報告書」の「今後10年の深刻度から見たグローバルリスクトップ10」では、半数が環境に関わるリスクとなっており、過去と比べて環境問題が深刻であるとみなされています。 「地球環境からもたらされる資源は有限」「個人レベルでも資源の過剰消費を抑えるべき」と理解はできても、実際の行動に落とし込むことは難しいものです。なぜなら私たちは「不公平感を是正したい」「目先の利益を追求したい」といった欲求を持っている

    • 感謝の効果は本当にあるのか?

      今回はポジティブ心理学の祖であるセリグマン博士が行った、著名な感謝研究についてご紹介します。 ポジティブ心理学と感謝研究研究についてご説明する前に、感謝研究の歴史について簡単にご紹介させてください。 現在、感謝に関する研究は”ポジティブ心理学”という分野の一環で行われています。 ポジティブ心理学とは、アメリカの心理学会会長であったマーティン・E・P・セリグマン博士によって1998年に創設された学問であり、人間の幸福やそれをもたらす要因についての研究を行う分野です。 ポジ

      • 期待の効果 ピグマリオン効果とは?その活用の検討

        ピグマリオン効果とは「ピグマリオン効果」ということばを聞いたことがあるでしょうか。 ピグマリオン効果とは「心から相手に期待をしそれを表明すると、相手がその期待に応えてくれる」というもので、「ポジティブな提案や励ましが自尊心を高め、それにより得られたポジティブなモチベーションにより期待に応えようと努力する」という心理効果であるとされています。 ピグマリオンというのは、ギリシャ神話に登場する王様の名前です。 ピグマリオンは、理想の女性として彫刻した彫像を愛し、人間の女性になる

        • 互恵性・社会関係資本とウェルビーイング

          Curryら(2018)のメタ分析によれば、他人を助ける行動(親切行動、利他的行動)はウェルビーイングに効果がありますが、その効果は控えめ(効果量推定値δ=0.28)だと言います。ただし、この結果は、利他的行動を測定した研究について分析されたものであり、利他的な意図(動機)については言及されていません。 ところが、Konrathら(2012)によれば、他人を助けたいという動機で参加したボランティアは、ボランティアをしなかった人よりも長生きし、自己中心的な動機で参加したボラン

        感謝の気持ちと資源消費行動の関係

        マガジン

        • 感謝研究
          3本
        • ウェルビーイング研究
          38本

        記事

          マインドフルネスとは? マインドフルネスの成り立ちと概要

          はじめにみなさんは「マインドフルネス」ということばを聞いたことがあるでしょうか? ストレスや不安を和らげるための方法の一つとして知られており、近年はスマホアプリで気軽に「マインドフルネス瞑想」に取り組めるようになりました。 マインドフルネスとは何か、Chat GPTに質問すると以下のように回答されます。 「現在の瞬間に意識を集中させる状態」というとピンとこないかもしれませんが、この考え方は仏教(禅)に由来しています。「瞑想」というと日本人にとってもイメージしやすいかもしれ

          マインドフルネスとは? マインドフルネスの成り立ちと概要

          ウェアラブル端末によってウェルビーイングは測定できるか

          最近、スマートウォッチやスマートリングなど、歩数や心拍数、呼吸、血圧、睡眠などを測定できるウェアラブル端末を身につけている人をよく目にします。かくいう筆者もスマートウォッチを使用していて、ついPC画面に集中しすぎて呼吸が少なくなっているときは、「深呼吸をしましょう」とよくアラートで注意されています。 ウェアラブル端末は年々発展を遂げており、さまざまな生体情報を測定できるようになっています。心拍数や心拍変動、血圧などの生体情報は、私たちの身体の健康状態を確認できる指標です。近

          ウェアラブル端末によってウェルビーイングは測定できるか

          【調査】日本人の寛容さ

          2024年3月20日に、World Happiness Report 2024が公開されました(Helliwell, et al., 2024)。 今回のレポートでは、日本の幸福度ランキングは51位で、スコアは5.910ポイントでした。これは、2021年の56位(5.940)、2022年の54位(6.039)、2023年の47位(6.129)と比較すると、ここ数年では、幸福度スコアが最も低い結果です。スコアに比べると、ランキングはあまり落ちていません。 さて、日本の幸福度

          個人的相対的剥奪感とウェルビーイング

          はじめに今回の記事では、ウェルビーイング研究で有名な前野隆先生が共著となっている論文から「個人的相対的剥奪感」の研究についてご紹介します。 こちらの記事で、他人と自分を比較する「社会的比較」をご紹介しました。社会的比較はいくつかの次元に分けることができ、場合によっては私たちにポジティブな影響を及ぼすことが分かっています。 今回ご紹介する個人的相対的剥奪感は、他者と比較することで生じる感情のことであり、社会的比較の結果として引き起こされるネガティブ感情のひとつです。 まず

          個人的相対的剥奪感とウェルビーイング

          自己決定理論におけるウェルビーイング | 自律性・有能感・関係性の充足が私たちのウェルビーイングを高める

          自己決定理論 (Self-Determination Theory; SDT) という理論をご存じでしょうか? 自己決定理論は、心理学者であるDeciとRyanが提唱した人間のモチベーションや人格発達に関する理論です。自己決定理論にもとづく、私たちのモチベーションや心理欲求の充足が、健康や幸福感、ユーダイモニアなどのウェルビーイングに関係するとした研究がされてきています。 自己決定理論は、人々がどのようにして自律的な行動(自己決定)をするかを理論化したものであり、教育や職

          自己決定理論におけるウェルビーイング | 自律性・有能感・関係性の充足が私たちのウェルビーイングを高める

          【論文紹介】自伝的記憶-思い出とウェルビーイング

          「思い出」を思い出して幸せな気持ちになることは、多くの人が経験しているのではないでしょうか?そうだとすれば、記憶はウェルビーイングに関係している可能性が高そうです。 実際、記憶とウェルビーイングの研究を調べてみると、自伝的記憶(autobiographical memory)とウェルビーイングの関係を確かめた論文が見つかります。 最近の研究では、会話で自伝的記憶を思い出すときに共有現実(shared reality)を経験すると、心理的ウェルビーイングが向上することや(B

          【論文紹介】自伝的記憶-思い出とウェルビーイング

          【論文紹介】感謝の8つの側面とその測り方

          はじめに感謝はポジティブ感情のひとつです。ポジティブ感情には感謝以外にも様々なものがあり、例えばポジティブ感情とネガティブ感情を測定するPANASという尺度では、「活気のある」「誇らしい」「わくわくした」といった項目で評価されます。 そんなポジティブ感情のなかでも、感謝は他者との関わり合いの中で生じるものであるため、社会や組織の運営という観点で特に注目すべき感情であるといえるでしょう。 感謝の気持ちを抱いたり、その気持ちを伝えたりすることで、幸福感の向上、抑うつ状態の軽減と

          【論文紹介】感謝の8つの側面とその測り方

          【論文紹介】職場環境はウェルビーイング・生産性にどのような影響を与えるか

          私たちのウェルビーイングについて考える上で、一日の中で多くの時間を過ごす職場におけるウェルビーイングについて考えることは避けては通れません。 様々な研究から、ウェルビーイングが高い従業員は、生産性が高く、欠勤率が低く、創造性やコミットメント、モチベーションが高い傾向にあることが示されており、企業としても従業員のウェルビーイングを考える重要性は高まりつつあります。 従業員のウェルビーイングを考える視点の一つとして、「職場環境」があります。物理的な職場環境が不十分であると、従

          【論文紹介】職場環境はウェルビーイング・生産性にどのような影響を与えるか

          【論文紹介】創造性がウェルビーイングを高める

          ウェルビーイングが創造性を高めるという研究結果はよく知られていますが、創造性がウェルビーイングを高めるという結果はあまり知られていません。 ウェルビーイングといっても、創造性に影響を及ぼすことが確認されているのはポジティブ感情やポジティブ気分(Amabile, et al., 2005)で、主観的ウェルビーイングそのものではありませんでした。 そして、多くの研究は西洋文化圏で実施されており、感謝研究のように、東洋でも同様の結果になるとは限りません。 そこで、今回は、Ta

          【論文紹介】創造性がウェルビーイングを高める

          人と動物との関わりにおけるウェルビーイング ~愛情ホルモン「オキシトシン」に着目した研究紹介~

          はじめにペットを飼っている方の中には、「飼い犬と暮らしているおかげで健康でいられる気がする」、「飼い猫と触れ合っていると癒される」といったように、ペットとの関わり合いが自身にポジティブな影響をもたらしている感覚がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 かくいう筆者も、犬猫のように触れ合える生き物ではありませんがペットを飼っており、ペットと関わることで幸福度が高まっているように感じています。 こういった幸福感には、“愛情ホルモン”や“幸福ホルモン”などと呼ばれることのある

          人と動物との関わりにおけるウェルビーイング ~愛情ホルモン「オキシトシン」に着目した研究紹介~

          【論文紹介】知恵 (wisdom) | 知恵は私たちのウェルビーイングを高めるか?

          みなさん、「知恵」という言葉に対して、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか? 一般に、知恵というものは年齢、あるいは人生経験を積み重ねる中で培われるものと考えられる傾向にあります。また、「生活の知恵」などのように、日常のちょっとした工夫に対して「知恵」ということもあります。さらに、仏教の文脈では「真理をみきわめる心の作用」として「智慧」という言葉が用いられています。 辞書で「知恵」の意味を調べてみると、「物事の道理を判断し処理していく心の働き。物事の筋道を立て、計画

          【論文紹介】知恵 (wisdom) | 知恵は私たちのウェルビーイングを高めるか?

          【基礎知識】自己超越|5つのアプローチとウェルビーイング

          人間の基本的欲求を5階層で表したマズローの欲求階層説は有名ですが、晩年のマズローが第6階層を提唱していたことは、知らない方もいるかもしれません。マズローは、生理的欲求・安全の欲求・所属の欲求・承認欲求・自己実現欲求に続く第6階層として自己超越欲求を提唱していた…とされています。 マズローは、「人間がよい人生、幸せな人生を生きるために必要なものを発見する(中村, 1998)」ことを目的として、世界を自己と環境のみで考える誤った二分法を正すために、自己と環境あるいは自己と他者の

          【基礎知識】自己超越|5つのアプローチとウェルビーイング