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【論文紹介】感謝とレジリエンスが「創造性」を高める

昨今、ビジネスシーンをはじめとした様々な場面で「創造性」を発揮することが求められてきています。世の中の仕組みや常識、技術が次々と変化していく中で、新しいアイデアやモノをつくり出せることは一つの重要な能力かもしれません。

では、創造力を発揮するために、私たちには何ができるでしょうか?

今回はその一つの可能性として、感謝と創造性の関係に着目した研究をご紹介しようと思います。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。2024年5月から6月にかけて、アプリ用に執筆した記事で毎日更新しています。

感情的知性と創造性

創造性に影響するものとして、「感情的知性」という概念があります。感情的知性とは、「個人の思考や行動を導くために感情を管理し、利用する能力のこと」を指します。つまり、自分自身やまわりの人たちの感情を理解し、うまく表現したり調整したりする能力のことです。

この感情的知性が高い人は、ポジティブな感情の維持やネガティブな感情の回避などが得意とされています。また自分や周囲の人々の感情をうまく調整することで、自分自身の柔軟な思考や集中力につなげたり、良好な対人関係を形成することができます。

そのため、問題解決に取り組む際にも、必要な情報をポジティブかつオープンに入手することができ、またネガティブな感情を回避しながら問題解決に取り組めるため、創造的な解決策を生み出しやすいと考えられています。

レジリエンスと創造性

感情的知性が高い人が創造性を発揮するときに、大きな役割を果たすのが「レジリエンス」だとされています。レジリエンスとは、大きなストレスや逆境を体験したときに、ポジティブな状態に維持・回復する能力を指します。

中国の大学生を対象とした研究では、様々な分野での創造性と感情的知性、レジリエンスについて調査がされました。その結果、レジリエンスが感情的知性と創造性の繋がりを媒介したことが示されました。

つまり、自他の感情をきちんと認識し調整することができると、困難や逆境を前にしてもポジティブに問題解決に取り組むことができ、結果として創造性を発揮することに繋がると考えられます。

感謝が創造性を促進する

上記で紹介した中国の研究では、「感謝」も一緒に測定されていました。これは感謝の気持ちの感じやすさとも言える指標です。

こちらの研究では、「感謝」はレジリエンスが創造性に繋がる効果を促進することも示されました。
感謝の感じやすさがあまり高くない人々の場合、レジリエンスが高くてもあまり創造性は発揮されません。一方で、感謝を感じやすい人々の場合、レジリエンスが高いと大幅に創造性を発揮されることが示されました。

つまり、創造性の発揮にはレジリエンスだけでは効果は限られており、「感謝の感じやすさ」と「レジリエンス」の両方が高いことで創造性を大幅に発揮することができます。

私たちが創造性を発揮しようとするとき、多くの場合、さまざまな課題に直面したり、否定的なフィードバックに対処したり、周囲の人々を説得する必要があったりします。そのような場面で、私たちがレジリエンスによりポジティブな状態に維持・回復するために、感謝の気持ちは心理的な資源として働くと考えられます。

創造性を発揮したいとき、感謝を意識してみよう

みなさんが創造性を発揮したいときや逆境を乗り越えたいとき、感謝を意識することが効果的に働くかもしれません。自他の感情を調整して、ポジティブな状態を維持・回復するために、感謝の気持ちは大きな心の資源になりえます。

大きなストレスや困難、逆境などに直面したとき、「感謝」の気持ちに意識を向けるのは簡単なことではないでしょう。日頃から、意識的に感謝をしてみるトレーニングをしておくことで、いざ創造性を発揮したいときや逆境を乗り越えたいときに、大きな力になるかもしれませんね。

(筆者:菅原)

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 研究開発 | NECソリューションイノベータ (nec-solutioninnovators.co.jp)

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参考文献

  • Tong D, Kang H, Li M, Yang J, Lu P, Xie X. The Impact of Emotional Intelligence on Domain-Specific Creativity: The Mediating Role of Resilience and the Moderating Effects of Gratitude. Journal of Intelligence. 2022; 10(4):115. https://doi.org/10.3390/jintelligence10040115

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