【論文紹介】感謝が学習モチベーションを高める
昨今、企業ではIT技術の急激な成長や労働力不足などの観点から、従業員のリスキリング(学びなおし)が注目されています。
学生や会社員に限らず、人生を通して学習・成長することの重要性が提唱されていますが、学習をするうえで大切な観点のひとつとして「学習モチベーション」が挙げられるでしょう。
学習意欲が低い状態で学習に取り組むよりも、高いモチベーションをもって取り組んだ方が良い学習効果が得られることが示されています。
今回は、この学習モチベーションを高める方法の一つとして、感謝に着目した研修をご紹介します。
感謝と学習モチベーションに関する研究
Nawa & Yamagishi (2021) は、大学生を対象に以下のような実験を行いました。
参加者はランダムに2つのチームに分けられ、2週間にわたり毎日心理的測定を行いました。片方のチームは、さらに+αで、日常で起こったことや人への感謝の記述を毎日残しました。もう片方のチームは、感謝の記述はしませんでした。
2週間後、感謝の記述を行わなかったチームは特に変化なかったのに対し、毎日感謝の記述を行ったチームは学習モチベーションの向上が示されました。さらに、その3か月後に再度心理測定を行ったところ、学習モチベーションの向上効果は持続して見られました。
分析の結果、学習モチベーションの向上は、無気力の減少によって引き起こされたことが示されました。無気力感が高いと、ストレスを感じやすく、学生生活への適応度の低下、不安やうつ傾向に繋がることが示唆されています。
研究者らは、日々の感謝から人のつながりや恵まれている意識が高まり、結果として無気力要因が減少し、自分を高めようと学習モチベーションが高まったのではないかと考えています。
まとめ
こちらの研究から、日常の中で出来事や人に感謝をすることは、学習モチベーションを向上させる効果があることが示されました。
こちらの研究は、大学生を対象とした研究ですが、社会人に対しても似たような効果が得られる可能性があります。学習したいものがある方は、ぜひ感謝を上手く活用して、モチベーションを高めてみると良いかもしれません。
(筆者:菅原)
参考文献
Nawa, N.E., Yamagishi, N. Enhanced academic motivation in university students following a 2-week online gratitude journal intervention. BMC Psychol 9, 71 (2021). https://doi.org/10.1186/s40359-021-00559-w