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幸福度の順位を決めるのはあなた次第 ~Better Life Indexによる幸福度の比較~

はじめに

国際比較が可能な幸福度の指標として、Better Life Indexというものがあるのをご存じでしょうか?
Better Life Indexは、11のカテゴリから成り、経済協力開発機構(以下、OECD)が公開しているWebページ上で、誰でも自分自身の基準でカテゴリに対する重みづけを行い、幸福度を比較することができます。

今回は、Better Life Indexとはどのような指標なのか、その歴史や背景、そして今公開されている最新の情報についてご紹介します。

GDPに代わる幸福度の指標とは

そもそもGDPとはどんな指標だったのか

「GDPだけでは幸福度を測ることができない」ということは、これまでの記事でもご紹介してきました。
とは言え、未だに国の豊かさを示す指標としてGDPが用いられることがあります。そもそもGDP何だったのか、振り返ってみます。

GDPとは、Gross Domestic Product(国内総生産)の略称で、一定の期間内に、一国の領土内で、政府や企業、非営利組織や家計により生産された物やサービスの付加価値の合計を指します。この合計を国民一人当たりに換算した値「一人当たりGDP」が比較に用いられることが多いです。
GDPは、1930年代にアメリカを皮切りに起こった世界恐慌から第二次世界大戦に至る時期に使われるようになりました。その目的は、世界恐慌で失われた経済規模や、戦争を遂行する上で必要な軍事調達をどの程度できるかを把握することでした。すなわち、そもそもGDPは、社会の幸福や豊かさの度合いを測ることを目的とされていなかったのです。それにも関わらず、GDPに勝る幸福度の代替指標がなかったことで、社会の繁栄の度合いを測る主な基準として利用され続けてきたのです。

GDPには制約がある

GDPはすでにご紹介した通り、「市場でやりとりされる価値」を生産として記録します。そのため、無償のサービスは記録されません。
例えば、ある人が雇っていた料理人と結婚して、料理が無償で提供されるようになった場合、その分GDPは減少するといったことになります。
さらに、GDPにはデジタルテクノロジーの価値が反映されていない、といった指摘もされています。デジタルテクノロジーの導入で、企業活動は大幅に改善したといわれています。しかし、GDPに基づいて計算される生産量は、下落傾向が続いているのです。

また、GDPは社会にとって望ましくないことが起きたとしてもプラスされることがあり、国の豊かさが増加したように見えてしまうことがあります。
例えば、交通事故が増加すると、緊急時のサービスが提供されることで経済活動が拡大し、GDPは増加します。麻薬取引など場合によっては違法な取引も、GDPに含まれていることがあります。
幸福度を測るのであれば、こういったマイナスな出来事に対するサービスは差し引かれるべきです。

さらに、社会的にプラスと思われる出来事が計上されなかったり、将来の豊かさや国全体の豊かさに関わることが無視されているという実態もあります。
例えば、人々が睡眠や入浴、食事などのパーソナルケアに費やす時間が増えたとすると、生活は豊かになったと捉えることができます。しかし、こういった活動はGDPには反映されません。
経済活動による自然環境の損失や、国内での経済格差なども明らかに生じていますが、それらが反映されることはない状態で、豊かさが議論されてしまいます。

範囲を超えて、幸福や豊かさの基準として用いられていたこと自体が問題だったのです。

GDP以外で幸福度を測るために

幸福度や豊かさの基準として、経済実績の測定結果であるGDPを用いることへの問題意識から、2008年にフランスの当時の大統領であったサルコジ氏が、経済学者のスティグリッツ博士らに呼びかけ、「経済成長と社会進歩の計測に関する委員会(以下、スティグリッツ委員会)」を発足させました。

スティグリッツ委員会は、複雑な社会の全体像を単一の指標で捉えることはできないとして、複数の指標をダッシュボードにして示すことを2008年の報告書で提案しました。その後、そのダッシュボードに取り入れる指標について議論が始まったのです。
生活の質を測るアプローチとしては、以下の3点を挙げていました。

  • 主観的幸福の測定
    個人レベルの生活の室の決定要因として、自分の生活全般や家族・仕事・経済状況に対する評価と、喜び・苦痛・怒りといった感情を測る。

  • ケイパビリティの測定
    自分の価値観に従って生きるために必要な人生の機会や選択肢を拡大する因子(健康・教育・所得など)を測る。

  • 公正な割り当て
    生活の質の様々な非金銭的側面に、人々の選考を尊重する方法で重みづけをするが、それを一部の富裕者の好みだけに偏ることを避ける。

より良い暮らしイニシアチブによる測定

2011年、OECDはより良い暮らしイニシアチブ(Better Life Initiative)の活動をスタートさせました。
より良い暮らしイニシアチブでは、スティグリッツ委員会の提案を反映させたかたちで幸福度の測定と可視化を行ったのです。それをBetter Life IndexというかたちでWebページ上に公開し、数年ごとに包括的な報告書としてHow’s Life?を公開しています。
OECDの幸福度測定の方針には、以下のようなものがあります。

  • 国全体の経済状況ではなく、世帯や個人に焦点を当てる

  • 幸福l  のための投資ではなく、人々にとって直接的かつ本質的な幸福の成果に焦点を当てる

  • 客観的データと主観的データの双方を含む

  • 個人間の幸福の成果の分布に着目する

幸福度に含まれる指標の中には、市場価値では測れないものがいくつもあります。そういった指標については、スティグリッツ委員会の後任である、OECDの「経済実績と社会進歩の計測に関するハイレベル専門家グループ」にて検討されています。

Better Life Index

前項では、Better Life Indexが公開されるに至った経緯について紹介しました。本項では、Better Life Indexの特徴や実際の内容についてご紹介していきます。

Better Life Indexの特徴

Better Life Indexとは、人々が幸福度に関する議論に参加し、そのプロセスを通じて何が最も重要かを知るために作られた、ウェブベースの対話型ツールです。どんなものなのか、実際に見て頂くのが早いと思いますので、以下にリンクを貼っておきます。

ツール自体には日本語版がありませんが、日本の測定結果に関する資料は日本語版が提供されています。
日本の結果だけ見たい方は、こちらをご覧いただくのが良いと思います。

Better Life IndexのWeb画面をご覧いただくと、11のカテゴリについて色分けがされており、それらの色で表現された花のような図形が国ごとに並んでいるかと思います。
この11カテゴリが、Better Life Indexにおける幸福度の指標となる項目となっています。
花のような図形をよく見ていただくと、花びらの色や大きさが異なっているかと思います。これが、各国のカテゴリごとの幸福度の大小を表しています。

さらに、11カテゴリについてスライドバーが設置されています。ここでカテゴリに対する+-の操作を行うことで、6段階の独自の重みづけとその組み合わせが可能となっており、その結果がインタラクティブに画面上に反映されます。
Webページ上にも書かれていますが、Better Life Indexは「あなた自身にとっての重要性に応じて幸福度を評価するツール」であるのです。

掲載されているのはOECDの38カ国に加え、ブラジル・ロシア・南アフリカの計41か国です。OECDの加盟国は現時点で以下の通りです。

【設立時からの加盟国】
オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トゥルキエ、イギリス、アメリカ

【途中からの加盟国】
日本、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、チェコ、ハンガリーポーランド、韓国、スロバキア、チリ、スロベニア、イスラエル、エストニア、ラトビア、リトアニア、コロンビア、コスタリカ

データは、OECDが国民経済計算(国連の定める国際基準に準拠し作成される統計)や国連統計などの公式情報源から取得しています。いくつかの指標については、世界140カ国以上で定期的に世論調査を実施しているギャラップのデータを使用しています。どのようなデータが用いられているかについては、How’s Life?に詳しく説明されています。

11のカテゴリの内容と評価

Better Life Indexのカテゴリは、住宅・所得と富・雇用と仕事の質・社会とのつながり・知識と技能・環境の質・市民参加・健康状態・主観的幸福・安全・仕事と生活のバランスの11種類です。
それぞれのカテゴリには1~4つの指標が含まれており、それらについて同じ重みでスコア化しています。

では、Better Life Indexの11のカテゴリの概要とそれに含まれる指標ごとに、トップの国および日本について、どのように評価されていたか紹介します。

【住宅】
人々が安心でき、プライバシーが確保され、睡眠と休息の場所が提供される場所を、満足のいく住宅条件と考えます。また、そういった住宅を買う余裕があるかどうかということも考慮する必要があります。そういった観点から、「住宅支出」「屋内に水洗トイレがある住居」「一人当たりの部屋数」の3指標が設定されています。
このカテゴリの1位はアメリカでした。アメリカでは平均して一人当たり2.4部屋があり、水洗トイレは99.9%設置されており高い水準ですが、住居の維持に対する支出が大きく、住宅支出のカテゴリについては9位になっています。
日本は26位で、「住宅支出」「屋内に水洗トイレがある住居」について平均値を下回っています。

【所得と富】
お金は幸福の目的ではありませんが、より高い生活水準や幸福を達成するための重要な手段です。そこで、「家計の純資産(金融資産と非金融資産の合計からローンなどの負債を引いたもの)」「家計の調整後の可処分所得の純額(税金などの金額を引いた所得額)」の2指標が設定されています。
このカテゴリの1位はルクセンブルクで、家計の調整後の可処分所得の純額は44,773 ドル、家計純資産は941,162ドルでした。
日本は21位で、家計の調整後の可処分所得の純額は28,872ドル、家計純資産は294,735ドルで、いずれも平均を下回っています。指標にはなっていませんが、社会的不平等さの評価について、データのある35カ国中28位となっており、経済的格差がある状態だということが分かります。

【雇用と仕事の質】
仕事は経済的利益だけではなく、社会的なつながりを保つことや、自尊心の構築、スキルや能力開発にも役立ちます。そのため雇用水準が高い社会は、より健全であると考えられます。指標は「失業時に得られる援助」「個人の収入」「長期失業率」「雇用率」の4つです。
このカテゴリの1位はアイスランドでした。特に雇用保障、個人の収入、雇用率が高く、ジェンダーによる不平等は小さいです。
日本は15位で、雇用率は77.27%と高いですが、個人の収入のランクが低いです。また、それぞれの指標についてジェンダーによる不平等が大きく、特に長期失業率、個人の収入のジェンダーによる不平等は、最下位から数えて2番目となっています。

【社会とのつながり】
他の人とのつながりやその頻度、関係の質は、幸福を決定する重要な要素であると考えられています。個別のコミュニティだけではなく、精神的なサポートを提供する仕事やサービスへのアクセスという観点もあります。指標は「サポートネットワークの質」で、必要な時に誰かに頼ることができると回答する人の割合を測定しています。
このカテゴリの1位はアイスランドで、国民の98%がいざというときに頼れる人を知っていると回答しています。日本は32位でした。

【知識と技能】
教育は、社会や経済活動に参加するために必要な知識、能力を個人に提供するうえで重要な役割を果たします。そこで、「教育年数」「学生のスキル(OECDの学習到達度調査の結果)」「学歴」の3指標が設定されています。
このカテゴリの1位はフィンランドです。特に教育年数が長く、フィンランドでは5歳から39歳までに19.8年近く教育を受けています。
日本は14位で、教育年数以外の指標はいずれもトップ3位以内であり、不平等も小さくなっています。そのため、学校シテムは優れており、多くの生徒に質の高い教育を提供していると評価されています。

【環境の質】
環境により、精神的な幸福感の向上やストレスからの回復などの恩恵がもたらされます。さらに、水や木材、水産物、作物などの資源に経済は依存しています。それらを測る指標は「水質に対する満足度」「大気汚染(PM2.5の平均濃度)」の2つです。
スウェーデン・フィンランド・ノルウェーが同じ得点で1位です。日本は21位でした。

【市民参加】
政府への信頼は、社会の幸福にとって重要な要素の一つです。政府の情報に関する透明性が高いことで、詐欺や汚職、公的資金の不正利用のリスクを抑え、最終的には公共サービスの向上につながるからです。指標は「法などの策定時の利害関係者の関与」「投票率」です。「法などの策定時の利害関係者の関与」については、政府が法律などを策定する際の協議方法や公開性、透明性、フィードバックの仕組みといった要素を測定します。
このカテゴリの1位はオーストラリアで、この調査で評価された投票率は91.9%でした。日本は39位で、かなり低い順位となっています。

【健康状態】
健康は、長寿につながるのはもちろんのこと、教育や雇用市場へのアクセス、生産性や富の増加、医療費の削減、良好な社会関係など多くの利点をもたらします。指標は「主観的な健康状態」「平均寿命」の2つです。主観的な健康状態は、自分の健康状態を「良好または非常に良好」と回答した人の割合です。
このカテゴリの1位はカナダでした。
日本は、平均寿命は84.4歳で1位でしたが、主観的な健康状態が40位と低く、このカテゴリ全体でのランキングも低くなります。

【主観的幸福】
主観的な幸福度(人生満足度)をアンケートで測定します。主観的な幸福度は、個人の健康、教育、収入、個人的な充足感、社会的状況に関する個人的な評価となります。指標は「人生満足度」のみです。
トップ3はフィンランド、アイスランド、デンマークで、北欧の国々です。日本は31位です。

【安全】
個人の身の安全は、幸福にとって重要な要素です。犯罪は生命や財産の損失に加え、身体的苦痛、心的外傷後のストレス、不安を引き起こす可能性があります。「殺人率」「夜の一人歩きが安全だと答えた人の割合」の2指標が設定されています。
このカテゴリの1位はノルウェーです。日本は殺人率については非常に低く客観的な安全性は高い一方、夜の一人歩きが安全だと答えた人の割合が低いため、全体では16位となっています。

【仕事と生活のバランス】
仕事と日常生活の適切なバランスを見つけることは、すべての労働者が直面する課題であり、家族も大きな影響を受けます。指標は「1日のうち仕事以外に費やせる時間」「週に50時間以上働く従業員の割合」の2つです。
このカテゴリの1位はイタリアですが、別カテゴリである『雇用と仕事の質』でも確認できる長期失業率は他の国々と比べて高い状態となっており、そういった事実が良くも悪くも影響している可能性もあります。
日本は37位と低く、長時間労働が指摘されています。

Better Life Indexの結果を見てみると

2020年の報告書(How’s Life?)では、金融危機の影響が強く出ていた10年前と比較すると、OECD諸国全体としての幸福度は改善しているということが指摘されています。例えば、平均寿命は1年以上伸び、平均殺人率は約1/3減少し、交通事故は減少し、夜の一人歩きも安全だと感じる人も増えています。収入や仕事も増加傾向にあり、雇用率と平均世帯収入は5ポイント以上増加しています。つまり、多くの人が安全で安定した暮らしを送るようになったのです。

一方で、幸福に関する不平等が是正されていないことも指摘されています。例えば、10年前と比べ平均世帯収入は上昇していますが、所得格差はほとんど変化していません。所得が上位 20%の人々は、下位 20%の人々の 5 倍以上の収入を得ています。また、女性の収入が男性より13%低く、無給労働を含めた労働時間が毎日30分近くなっています。

では、Better Life IndexのWebページで、結果を見てみましょう。スライドバーをいじらない状態で、ランク別表示をしてみてください。すると、全ての指標に関して重みづけなしで比較することができます。記事作成時(2023年10月)の最新状況では、以下のような結果となっていました。

$$
\begin{array}{c:c:c:c:c:c}
順位 & 国 & 順位 & 国 & 順位 & 国\\ \hline
1 & ノルウェー & 21 & スペイン & 41 & 南アフリカ \\
2 & アイスランド & 22 & チェコ共和国 \\
3 & スイス & 23 & イスラエル \\
4 & スウェーデン & 24 & イタリア \\
5 & フィンランド & 25 & ポーランド \\
6 & オランダ & 26 & スロバキア共和国 \\
7 & オーストラリア & 27 & リトアニア \\
8 & アメリカ & 28 & ハンガリー \\
9 & デンマーク & 29 & ラトビア \\
10 & カナダ & 30 & 日本 \\
11 & ルクセンブルク & 31 & ポルトガル \\
12 & ニュージーランド & 32 & 韓国 \\
13 & ドイツ & 33 & ロシア \\
14 & アイルランド & 34 & ギリシャ \\
15 & イギリス & 35 & チリ \\
16 & ベルギー & 36 & コスタリカ \\
17 & オーストリア & 37 & ブラジル \\
18 & フランス & 38 & トゥルキエ \\
19 & エストニア & 39 & メキシコ \\
20 & スロベニア & 40 & コロンビア \\
\end{array}
$$

上記はこれまでご説明した11のカテゴリについて総合した結果となっています。
では次に、経済的な幸福に着目してみましょう。『所得と富』のカテゴリについて、重みを付けてみます。すると、以下のような結果となり、順位が変動します。

$$
\begin{array}{c:c:c}
順位 & 国 & 順位の変動\\ \hline
1 & ルクセンブルク & ↑ \\
2 & スイス & ↑ \\
3 & アメリカ & ↑ \\
4 & アイスランド & ↑ \\
5 & オーストラリア & ↑ \\
\end{array}
$$

重みは『所得と富』のみ5で、他は1です。矢印はデフォルト状態での順位からの上下を示します。

「北欧の国は幸福である」といったことを耳にすることもありますが、経済的な面では多少結果が異なることが分かります。
ルクセンブルクについては一人当たりのGDPが高い事でも知られている国で、経済に着目した際に上位となることは納得の結果です。
アメリカは3位となっており経済的な幸福度が高いように見えますが、OECD諸国の中でも経済的富の格差が非常に大きいことが指摘されており、アメリカ国内での幸福の偏りがある可能性があります。GDPの数字だけの比較とは異なり、Better Life IndexのWebページではこういった格差等についても言及しています。

次に、環境の幸福に着目します。『環境の質』のカテゴリについて、重みを付けてみます。

$$
\begin{array}{c:c:c}
順位 & 国 & 順位の変動\\ \hline
1 & ノルウェー & → \\
2 & アイスランド & → \\
3 & スウェーデン & ↑ \\
4 & フィンランド & ↑ \\
5 & スイス & ↓ \\
\end{array}
$$

重みは『環境の質』のみ5で、他は1です。

経済的な幸福に比べ、デフォルトの順位とあまり変動はありませんでした。総合的な幸福度が高い国々は、環境についても幸福な国々であるといえるでしょう。

最後に、主観的な幸福に着目します。『主観的幸福』のカテゴリについて、重みを付けてみます。

$$
\begin{array}{c:c:c}
順位 & 国 & 順位の変動\\ \hline
1 & フィンランド & ↑ \\
2 & アイスランド & → \\
3 & スイス & → \\
4 & ノルウェー & ↓ \\
5 & オランダ & ↑ \\
\end{array}
$$

重みは『主観的幸福』のみ5で、他は1です。

環境と同じく、デフォルトの順位とあまり変動はありませんでした。OECD諸国の平均は10段階で6.7でしたが、上位5か国はいずれも7.5以上と高い値を示しています。
経済的な幸福に着目した際に上位だったルクセンブルクは9位、アメリカは10位となっていました。

このように重みづけを変えてみたり、格差について比較をしてみたりすると、GDPや経済的な豊かさだけでは国々の幸福を語ることができないということが分かるのです。

日本は客観的な指標としては高い水準であっても、主観的な指標で低い水準となっていることもあります。そのため、重みづけを変えたとしても、なかなか上位には表れてきません。
これは日本だけでなく、韓国にも見られる傾向です。主観的な回答のつけ方や幸福感については、文化差があることを念頭に置いておく必要があるでしょう。

Better Life Indexで見る日本の幸福度

Better Life Indexの日本に関する結果と、日本の測定結果に関する資料から、日本の幸福度について見てみましょう。日本の幸福度は以下の図のように評価されています。

図. 日本の2018年の幸福度(How’s Life in Japan? より筆者作成)
2018年のデータがない項目はサークルが白くなっています。 塗りつぶされた線が長い項目ほど、ほかのOECD諸国よりも優れた値です。 斜線は不平等の度合いを示しています。

日本は全体で30位という結果であったことからも分かる通り、Better Life Indexで評価されている項目については、OECD諸国の平均値を下回っているものが多いです。一方、『雇用と仕事の質』『教育』『安全性』については平均を上回っており、『健康状態』に含まれる「平均寿命」については1位と最も高い値となっています。

日本は全体で30位という結果であったことからも分かる通り、Better Life Indexで評価されている項目については、OECD諸国の平均値を下回っているものが多いです。一方、『雇用と仕事の質』『教育』『安全性』については平均を上回っており、『健康状態』に含まれる「平均寿命」については1位と最も高い値となっています。

日本について指摘されているポジティブな点、ネガティブな点について以下にまとめます。

【ポジティブ】

  • 15歳から64歳までの約77%が有給の仕事に就いている

  • 高校卒業率が高い

  • 生徒の成績がよく、男女の差が小さい

  • 87%の人が水質に満足している

  • 89%の人がいざというときに頼れる人がいると感じている

【ネガティブ】

  • 長時間働く労働者が多い

  • 一人当たりの所得が低い

  • 選挙の投票率が非常に低い

  • 主観的な幸福度が低い

日本は客観的には安全で安定している国といった評価である一方、労働や所得、政治への市民参加や主観的幸福度といった観点では、他のOECD諸国と比べ低いと言われています。

Better Life Indexでは客観的な指標だけではなく、主観的な指標も用いられており、そこで低い値を示していることもあります。つまり、私たち日本人の意識が、今後の幸福感のランキングを大きく変える可能性もあるといえるでしょう。

おわりに

今回は、GDPで幸福度を測ることの問題点や、11のカテゴリから幸福度を評価できるBetter Life Indexというツールをご紹介しました。

Better Life IndexのWebサイトでは、今回ご紹介したように11のカテゴリの重みづけを自由に変更し、その結果を視覚的に確認することができます。ぜひ、Better Life Indexを利用して、あなた自身が考える幸福感に基づき、順位を確認してみてください。GDPの比較だけでは見えてこない何かが見えてくるかもしれません。

参考

1.      村上由美子, & 高橋しのぶ. (2020). GDP を超えて-幸福度を測る OECD の取り組み. サービソロジー, 6(4), 8-15.
2.      OECD. (2020). How’s Life in Japan?
3.      OECD. (2020). How’s Life? Measuring Well-being