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【論文紹介】ノスタルジーを感じてウェルビーイングに -感謝感情による媒介効果

みなさんは日常のふとした瞬間に、過去のことを思い出して懐かしさを覚えたり、心が温かくなるような経験をしたことはありますか?

今回は、そんな「ノスタルジー」を感じることと、感謝やウェルビーイング(幸福感)との関係を調べた研究についてご紹介します。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。2024年5月から6月にかけて、アプリ用に執筆した記事で毎日更新しています。

ノスタルジーの効果

ノスタルジーとは、過去の出来事や人々について思い出したり、過去の自分について思い出すこと通して、懐かしさや切なさを感じることを意味します。ノスタルジーは結婚や誕生日、同窓会などの社会的なイベントをきっかけに感じることもあれば、音楽や匂い、場所などが引き金となって感じることもあります。

いくつかの研究では、ノスタルジーにはポジティブな効果があるとされています。例えば、ノスタルジーを感じることで、死に対する恐怖心が和らぐ、社会的なつながりの意識が高まる、自己評価が高まるなどの効果が報告されています。

ノスタルジーを感じるときには、一般に友人や家族など身近な人々との交流について、ポジティブな良い時代を思い出す傾向があるようです。では、身近な人々とのポジティブな関わりを思い出すことで、「感謝」や「ウェルビーイング」にはどのような効果があるでしょうか?

ノスタルジーはポジティブ感情を高め、ネガティブ感情を抑える

研究者らは、ノスタルジーと感謝、ウェルビーイングの関係を検証するために、大学生を対象とした実験を行いました。参加者をノスタルジー群と対照群に分けて、ノスタルジー群には参加者の幼少期に流行したお菓子やおもちゃ、ゲーム、アニメ、音楽などに関する映像を見てもらいました。一方で、対照群には自然の風景の映像を見てもらいました。

映像を見た参加者たちは、ノスタルジーの程度、感謝の程度、主観的ウェルビーイング(ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生満足度)について回答しました。

その結果、ノスタルジー群では対照群と比較して、主観的ウェルビーイングの構成要素であるポジティブ感情が高く、ネガティブ感情が低いという結果が得られました。つまり、懐かしいものの映像を見てノスタルジーを感じることには、わくわくや誇らしさなどのポジティブな感情を高め、不安やイラ立ちなどのネガティブな感情を抑える効果があることが示されました。

一方で、主観的ウェルビーイングの重要な観点である人生満足度にはあまり影響を及ぼしませんでした。

感謝がノスタルジーとウェルビーイングをつなぐ

ノスタルジーと感謝感情には正の相関があり、ノスタルジー群は対照群よりも感謝の感情が高いという結果も得られました。また感謝の感情は、ポジティブな感情と正の相関があり、ネガティブな感情とは負の相関関係が見られました。

ノスタルジー、感謝、ポジティブ感情、ネガティブ感情の関係を調べるために、因果関係を明らかにする分析をした結果、ノスタルジーがポジティブ感情を高め、ネガティブ感情を抑える効果は、感謝の感情が媒介していることが分かりました。

つまり、ノスタルジーを感じることは、感謝感情が高まることにつながり、その結果としてポジティブ感情が高まり、ネガティブ感情が抑えられるという効果があるということが言えそうです。

ノスタルジーに浸ってみよう

感謝がウェルビーイングに良い影響を与えることを示す研究は多くありますが、感謝をしようとしてもなかなか思いつかないこともあると思います。

そんな時はノスタルジーに浸ってみるのも良いかもしれません。過去の懐かしい思い出や経験を思い返して心が温まるようなことがあれば、そのコトやヒト、モノなどに感謝をしてみましょう。

特に、ストレスを感じていたり、不安を感じていたりするときには、ネガティブな気持ちを抑えて、ポジティブな気持ちに切り替えるきっかけになるでしょう。

(筆者:菅原)

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参考文献

  • Li, B., Zhu, Q., Li, A. et al. Can Good Memories of the Past Instill Happiness? Nostalgia Improves Subjective Well-Being by Increasing Gratitude. J Happiness Stud 24, 699–715 (2023). https://doi.org/10.1007/s10902-022-00616-0