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【論文紹介】感情表現のモチベーションと満足度 -感謝と怒りの有用性信念

みなさんはコミュニケーションをする上で、感情表現をすることは有用だと思いますか?

相手に怒りを伝えることは役に立つでしょうか?相手に感謝を伝えることは役に立つでしょうか?

感情を表現することが役に立つと考える人ほど、積極的に感情を表現すると思います。逆に、感情表現することは有用ではないと考える人は、感情をあまり表に出さないかもしれません。

このような感情を表現する動機(モチベーション)に関わる研究があるので、今回ご紹介したいと思います。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。2024年5月から6月にかけて、アプリ用に執筆した記事で毎日更新しています。


「怒り」や「感謝」を表現する効果

私たちの感情にはさまざまなものがありますが、今回はネガティブな感情として「怒り」、ポジティブな感情として「感謝」に焦点を当ててお話ししたいと思います。

怒りを相手に伝えることは、その関係性を大切にしていることを表現し、今ある問題を協力して解決したいという意思表示だと捉えることができます。一方で、怒りを表現することで関係満足度が下がってしまうなど、関係を構築するする上で有害であるという報告もあります。

感謝を相手に伝えることは、相手との関係性を強化することが知られています。しかし、人々は感謝を表現することの効果を過小評価し、コストを過剰評価する傾向にあることも報告されています。

このように、怒りはさまざまな影響が考えられることから、感謝はその効果の評価にバイアスがあることから、感情(怒り・感謝)を表現することの有用性は人によって考えのバラつきがあると考えられます。

では、感情表現の有用さをどう捉えるかは、感情票にどのような影響をあたえるでしょうか?また、その満足度にどのような影響をあたえるでしょうか?

実験 | 感情表現の有用性信念と満足感

Yu & Chen (2023) は、感情表現を有用と捉えるかどうか(有用性信念)と感情表現の表現(または抑制)、その感情を体験した出来事の満足感にどのような影響をあたえるか明らかにするために実験を行いました。

実験参加者らには、怒りや感謝を感じた出来事をそれぞれ想起してもらい、その時にその感情をどの程度表現(または抑制)したか、その出来事にどの程度満足したかを回答してもらいました。また、コミュニケーションをするなかで怒りや感謝を表現することは有用であると思うか(有用性信念)もそれぞれ回答してもらいました。

その結果、怒りを表現/抑制したときでは、出来事に対する満足感はあまり差がありませんでした。一方で、感謝を表現したときは感謝を抑制したときと比較して、出来事に対する満足感が大きく高かったことが示されました。

つまり、全体でみると怒りを表現するか抑制するかは満足感にあまり影響せず、感謝を表現することは満足感が高め、抑制することは満足感を低下させる可能性があります。

では、怒り・感謝の感情の表現が有用であると思っているかどうかも合わせて考えるとどうなるでしょうか。

怒りを表現した場合は、怒りの表現が有用だと思う人ほど満足感は高い傾向が得られました。一方で、怒りを抑制した場合には、怒りを有用だと思うかどうかは満足感に影響しませんでした。

つまり、怒りを有用だと思っているほど、怒りを伝えたときに満足感が得られることが分かりました。

感謝を表現した場合では、感謝が有効だと思う人ほど満足感が高い傾向がありました。逆に、感謝を抑制した場合には、感謝が有効だと思うほど満足感が低い傾向が得られました。

つまり、感謝の表現が有用だと思っているほど、感謝を伝えたときには満足感が得られますが、感謝を伝えなかった(抑制した)ときにはその出来事に対する満足感が下がってしまうことが示されました。

これらの研究結果から、私たちはある出来事に対して、感情(例えば、怒りや感謝など)を表現するか抑制するかに加えて、その感情を表現することをポジティブに捉えているかネガティブに捉えているかも含めて、その出来事に対する満足感は変化します。

特に、感謝に関しては有用性を感じているにも関わらず、感謝を表現できないと満足感の低下にまで影響してしまいます。

まとめ

これまでいくつかの記事でご紹介してきた通り、感謝をすることには他者との信頼関係を強化することや個人のウェルビーイングを高めることをはじめ、さまざまな効果があると考えられています。

しかしながら、感謝をすることは有用だと考えているにも関わらず、感謝を抑制してしまったり、感謝を伝えられなかったりすると、感謝をすることによる効果を得られないだけでなく、その出来事に対する満足感は下がってしまうかもしれません。

感謝を伝えるタイミングを逸してしまうこともあるかもしれませんが、ぜひ感謝を感じたときには、積極的に感謝を伝えていっていただければと思います。

(筆者:菅原)

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