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【論文紹介】感謝の目撃効果 -感謝を目撃した人が示す傾向

今回は、感謝に関する研究の第一人者のひとりであるAlgoe氏が2020年に発表した「感謝の目撃」に関する研究についてご紹介します。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。
2024年5月は、アプリ用に執筆した記事で毎日更新しています。

感謝を目撃する第3者の存在

これまでの心理学における感謝の研究では、

  • 感謝した人(送り手)の内面における心理的効果

  • 感謝された人(受け手)の内面における心理的効果

  • 感謝した人(送り手)と感謝された人(受け手)の関係性における心理的効果

が中心的に研究されてきました。

しかし、Algoe et al. (2020) では、感謝を目撃した第3者に着目した研究がされています。

では、感謝を目撃した人にはどのような心理的影響があるのでしょうか?

「感謝した人」を助け、関係を持ちたいと思う

この研究では、実験参加者がある感謝を目撃した場合と目撃しなかった場合で、感謝した人(送り手)に対する行動や感情がどのように変化するのか検証しています。

実証実験の結果、感謝を目撃した人(目撃者)は感謝をした人(送り手)に対して、以下のような傾向を示すことが明らかになりました。

  • 感謝した人(送り手)に対して援助行動をとろうとする

  • 感謝した人(送り手)と親密になりたいと感じ、親和行動をとろうとする

つまり、感謝の目撃者は感謝の送り手に対して、「助けてあげたい」「仲良くなりたい」と考えて行動しようします。

また、目撃者がこのような行動を取ろうとする理由は、感謝の目撃者は感謝の送り手が「他人を受け容れ、大切にする人」であると判断するからであると、同様の実験で示しています。

「感謝された人」にも効果あり

また、この研究では、感謝を目撃した人(目撃者)が感謝された人(受け手)にどのような行動や感情をとるのかについても、同様の検証しています。

検証の結果、感謝の送り手に対する場合と同様に、感謝を目撃した人(目撃者)は、感謝をされた人(受け手)に対して、以下のような傾向を示すことが明らかになりました。

  • 感謝された人(受け手)に対して援助行動をとろうとする

  • 感謝された人(受け手)と親密になりたいと感じ、親和行動をとろうとする

つまり、感謝の送り手に対する感情と同様に、感謝の目撃者は感謝の受け手に対しても、「助けてあげたい」「仲良くなりたい」と考えることが分かりました。

また、感謝された人(受け手)対しては、「(道徳的に)善い人」であると認識することを理由にこのような行動をとろうとすることが示されています。

感謝を目撃してもらおう!

このように感謝を第3者から目撃してもらうことは、自分自身に対して「助けてあげたい」「仲良くなりたい」と思ってもらうことに繋がります。そして、自分自身だけでなく、感謝の相手にも同様の効果があります。

職場などのコミュニティで感謝をする際には、感謝を「見える化」することで、コミュニティ内で助け合いが広がり、関係性が強くなることに繋がるかもしれません。

(執筆者:菅原)

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参考文献

  • Algoe, S. B., Dwyer, P. C., Younge, A., & Oveis, C. (2020). A new perspective on the social functions of emotions: Gratitude and the witnessing effect. Journal of personality and social psychology, 119(1), 40–74. https://doi.org/10.1037/pspi0000202


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