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ウェルビーイング研究

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ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。
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#wellbeing

2024年のウェルビーイング記事まとめ|NECソリューションイノベータ

2024年も、もう少しで終わりますね。 今年、私たちはウェルビーイングや感謝に関する記事を93件投稿してきました。記事の内容は少し難しいものだったかもしれません。これは、狙ってそうしていました。 ここ数年で、ウェルビーイングという言葉はよく聞かれるようになり、それにともない「ウェルビーイングとは?」といった入門的な文章は、ウェブサイトを検索すると簡単に見つかります。 その一方で、論文検索を用いれば、専門的なウェルビーイングに関する論文も数多く見つけることができます。しか

組織の徳倫理学|徳と企業経営の交差点

数回前の記事で、ウェルビーイングの1つであるアリストテレスのユーダイモニアと起源が同じである徳倫理学について触れました。 現在の倫理学は、主として功利主義・義務論・(現代)徳倫理学の3つに分けられました。さらに、現代徳倫理学は、主としてアリストテレス徳倫理学(新アリストテレス主義)・行為者に基づく徳倫理・多元主義的徳倫理の3つに分けることができました。 倫理学は、「善とは何か?」や「正しい行為とは何か?」を考える哲学ですが、人間個人を対象にしています。しかし、現代社会を構

心理的資本 (PsyCap) | 心理的資本と従業員のパフォーマンス・ウェルビーイング

心理的資本(Psychological Capital; PsyCap)という言葉をご存じでしょうか? 心理的資本は、ポジティブ心理学の隆盛にともなって2000年代初頭に提唱された概念です。心理的資本は、私たちのポジティブな心理状態を高め、仕事のパフォーマンスやウェルビーイングを向上させるための鍵として機能するものとして期待されています。 今回の記事では、心理的資本(PsyCap)の基本的な構成要素や測定方法、そして、私たちへの影響について紹介していきます。 心理的資本

【基礎知識】セルフ・コンパッション概論

セルフ・コンパッション(self-compassion)は、主に自分への思いやりの心を意味し、2003年に提唱されて以来、20年で急速に研究が増えている研究テーマです。様々な研究によって、概念定義、測定方法、他の概念への効果が確立されつつあり、開発された心理療法は様々な場面への適用が試されています。それらの研究の中で、ウェルビーイングとの関連も明らかにされてきています。 今回は、セルフ・コンパッションの提唱者であるNeffが総論(Neff, 2023)として全体像をまとめて

希望とウェルビーイング | 希望に関する心理学研究とウェルビーイングとの関連

みなさんは、ご自身の生活が今後良くなっていくと希望を抱くことは出来ているでしょうか? 内閣府による世論調査では、1968年から現在に至るまで「今後の家庭の生活は良くなっていく」と回答する人の割合は、大きく減少しています。特に、オイルショックやバブル崩壊のタイミングで割合は大きく低下しており、21世紀に突入して以来、基本的に10%を下回っています。 「生活が良くなっていく」という回答の割合が低迷している背景には、さまざまな要因があると考えることが出来そうですが、全体として、

【基礎知識】VIAの強みとウェルビーイングの関係

以前の記事で、職場へのポジティブ心理学介入をご紹介しました。その中で、「強み」に基づいたストレングス介入があることを簡単に説明しました。そして、有名な強みの測定方法には、VIA (Value In Action) と Clifton’s Strengthsがあることもご紹介しました。 今回は、VIAに基づくストレングス介入の原点となった研究を2つほどご紹介したいと思います。 VIAは、VIA Institute on Characterにアカウントを作成すると無料で測定す

【基礎知識】エンゲージメントとウェルビーイングの関係|エンゲージメントの調整効果・媒介効果・決定要因

Gallup社の「State of the Global Workplace Report 2024」によると、日本の従業員エンゲージメントのスコアは6%で、香港とならび141カ国中で最下位でした。2017年以降、日本の従業員エンゲージメントは常に5~6%であり、日本の企業では従業員エンゲージメントの向上が重要な課題の一つとなっています。 一方、ウェルビーイングとエンゲージメントは関連した概念だと考えられます。例えば、PERMAやSPIREといったポジティブ心理学のウェルビ

【基礎知識】ウェルビーイングと収入の関係|カーネマンの研究結果の反証と解釈

直感的には、貧乏よりも裕福な方が幸せだと考えられるため、収入が多ければ多いほどウェルビーイングは高いと考えられます。もちろん、生活が困窮する収入よりは、生活に困らない程度の収入があった方が幸せなのは間違いないでしょう。 これに対し、Kahneman & Deaton (2010) は、ある一定上の収入を超えると幸せを感じにくくなっていくという有名な調査結果を示しました。この結果は、ウェルビーイングと収入の関係についての定説となっていきました。 しかしながら、近年では少し異

食事とウェルビーイング | ウェルビーイングを高める食事とは?

1990年代後半に提唱されたポジティブ心理学は幸福や満足感、強みなどに焦点を当て、人間の心理的な繁栄を目指した研究が推進されてきました。感謝やマインドフルネス、強みなど、さまざまなアプローチから、私たちのウェルビーイングを向上させるための介入方法が検討されてきました。 近年では、食に関する要因がウェルビーイングに高めるという新たなパターンが発見され、ポジティブ心理学領域において食品や食習慣などに着目した研究が増加しています。食事が身体的な健康だけでなく、精神的な側面において

【基礎知識】人間関係を構築・維持する方法|黙示録の四騎士とサウンド・リレーションシップ・ハウス理論

PERMA理論やSPIRE理論の「R(relationship)」や、心理的ウェルビーイングの6要素の1つが「積極的な他者関係(positive relationship)」などから分かるように、ウェルビーイングには人間関係が欠かせません。(詳細は、以下の記事を参照してください) 今日、よく参照される人間関係の基盤的な研究の1つに、J. Gottmanの研究があります。Gottmanは、恋人同士や夫婦を対象にして、その関係性の変化(構築・維持・崩壊)を20年以上追跡調査して

謙虚さと心理的ウェルビーイング|謙虚さの定義、謙虚さと超越性と社会的活動の関係

謙虚さがウェルビーイングと関係していることは、ポジティブ心理学の初期から研究されてきました(Seligman & Csikszentmihalyi, 2000)。また、最近は、力強いリーダーシップに対して、謙虚なリーダーシップも見直されています(Owns & Heckman, 2012)。しかし、謙虚さは必ずしもポジティブなものではないという考えも根強く残っています。 特に、社会的活動の文脈で批判されています(Bloomfield, 2020)。なぜなら、社会的活動には「率

Emotional Intelligence (EI・EQ) | リーダシップやウェルビーイングへの影響

みなさんは「Emotional Intelligence (EIまたはEQ, 感情知能) 」という概念をご存じでしょうか? EIとは、簡単に言えば「自分や他者の感情状態を認識し、上手く活用する能力」のことです。EIの概念自体は20~30年前から提唱され、欧米のビジネスシーンを中心に活用が進められていますが、ここ数年でEIはさらに注目を集めています。 EIは、私たちの日常生活や職場において、どのような影響を与えるでしょうか?心理学などを中心に、EIの効果を示す研究結果が示さ

【論文紹介】ノスタルジーを感じてウェルビーイングに -感謝感情による媒介効果

みなさんは日常のふとした瞬間に、過去のことを思い出して懐かしさを覚えたり、心が温かくなるような経験をしたことはありますか? 今回は、そんな「ノスタルジー」を感じることと、感謝やウェルビーイング(幸福感)との関係を調べた研究についてご紹介します。 ノスタルジーの効果ノスタルジーとは、過去の出来事や人々について思い出したり、過去の自分について思い出すこと通して、懐かしさや切なさを感じることを意味します。ノスタルジーは結婚や誕生日、同窓会などの社会的なイベントをきっかけに感じる

互恵性・社会関係資本とウェルビーイング

Curryら(2018)のメタ分析によれば、他人を助ける行動(親切行動、利他的行動)はウェルビーイングに効果がありますが、その効果は控えめ(効果量推定値δ=0.28)だと言います。ただし、この結果は、利他的行動を測定した研究について分析されたものであり、利他的な意図(動機)については言及されていません。 ところが、Konrathら(2012)によれば、他人を助けたいという動機で参加したボランティアは、ボランティアをしなかった人よりも長生きし、自己中心的な動機で参加したボラン