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【基礎知識】信頼の種類−「信頼の構造」における分類

感謝するという行為には、「感謝は二人の関係性をより強固にする」(Algoe, 2008)という効果が確認されています。

ここで言う関係性の強さとは、信頼関係の強さのことです。

では、信頼とは何でしょうか?

言われてみると、よく分かりませんね。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。


信頼と信頼性

山岸(1998)によれば、信頼(trust)と信頼性(trustworthness)は異なる概念です。

まず、信頼とは「自分に不利な行動を相手がとらないという期待」のことで、信頼する側の認知です。

一方、信頼性とは「信頼できると推測できる相手の特性」のことで、信頼される側の性質を表しています。

何を期待するのか?

もし、あなたが誰かに仕事を任せるとき、何を理由に大丈夫だろうと推定しますか?

「スキル・技術・資格を持っているから大丈夫だ」と考えますか?
「これまで真面目に取り組んできたから大丈夫だ」と考えますか?

これらは、少し違うタイプの期待で、
前者は「きっとできるはず」という「能力への期待」なのに対し、
後者は「おかしなことはしないだろう」という「意図への期待」です。

なぜ信頼できるのか?

では、「おかしなことはしないだろう」と思うとき、何を根拠にするでしょうか?

「自分の期待を裏切っても得をしないから」と考えるでしょうか?
「自分の期待を裏切るような人ではないから」と考えるでしょうか?

山岸(1998)は、前者を「安心」と呼び、後者を「信頼」と呼んでいます。「安心」は何らかの保証(罰を受ける、損をする、評価される等)を求めますが、「信頼」は信頼する側の予測にすぎず、そのような保証はありません。言い換えると、「安心」は信頼される側に責任を課すのに対し、「信頼」は信頼する側に責任があります。

山岸らの研究によれば、日本人は「信頼」よりも「安心」を重視します。「安心」を求めるため、社会に規則や構造を定義して不確実性を無くし、それに従うことで安全欲求を満たそうとします。これが、日本人がいわゆるムラ社会を作ってしまう理由の1つです。

逆に、米国人は「信頼」を重視するため、ルールや空気に従わない人がいても、「自分が不利になるようなことはしないだろう」と考え、気にしないそうです。日本だと、「空気が読めていない」として社会的制裁を加えてしまうかもしれません。

信頼の種類

このようにして、「安心」と区別された「信頼」は、「相手を知っている」ことが必要です。そのため、根拠となる情報によってさらに分類することができます。

以下では、山岸(1998)の分類をご紹介します。

一般的信頼

一般的信頼は、相手について何も知らないときの信頼です。山岸らによって、日本人はこのタイプの信頼が低いことが分かっています。

山岸らによれば、一般的信頼が高いと、相手が信頼できるか見極めようとするため、積極的に情報を収集しようとします。逆に、一般的信頼が低く「安心」が高いと、安心してしまって相手の情報収集に消極的になります。

そして、情報収集に消極的だと、入ってきた情報を鵜呑みにしてしまい、事実や異なる意見を集めようとはしなくなります。そのため、表向きの情報に流されやすく、騙されやすい傾向にあるそうです。

カテゴリー的信頼

カテゴリー的信頼は、社会的地位・職業・肩書・資格・ステレオタイプなどの記号的な情報に基づく信頼のことです。

例えば、医者・弁護士・大学教授・政治家・社長などは、本人と無関係に肩書だけである程度信頼されることがあります。個人ではなく、記号で示されるカテゴリー全体への信頼になります。

もし、「弁護士の人が、そんなことをするなんて!」と感じることがあれば、弁護士カテゴリーへの信頼を持っていたことを示しています。

個別的信頼

個別的信頼は、相手の一般的な人間性にもとづく信頼のことです。

「あの人は立派な人だから」「あの人は悪い人じゃないから」と相手の信頼性に確信を持つ場合に作られる信頼です。

長期的関係性のような直接接触を根拠にする場合も、評判のような間接接触を根拠にする場合もあります。

例えば、好きな芸能人が過ちを犯したとき「裏切られた」と感じるのは、間接接触による個別的信頼を持っていたためです。

人格的信頼

人格的信頼は、一般的信頼とカテゴリー的信頼と個別的信頼を足しわせたものです。

相手の一般的な人格特性としての信頼性の程度を情報によって評価します。様々な情報を吟味した上で、「あの人は人格者」と判断して信頼します。

人間関係的信頼

人間関係的信頼は、相手が自分に対して好意的な態度や感情を持っているという情報に基づく信頼です。

人格に問題があっても「自分には好意的だから自分を裏切ることはないだろう」と考えて信頼します。そのため、人格的信頼とは区別されます。

まとめ

私たちの実験によれば、感謝と信頼には関係があります。

感謝することは、相手にポジティブな感情を伝える行為です。相手は、「自分に好意的である」という情報を受け取ることになります。このことから、感謝することは、好意的な情報に基づく人間関係的信頼を強めていると考えられます。

筆者:山本

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参考文献

  1. 山岸俊男. (1998). 信頼の構造. 東京大学出版会.
    https://www.utp.or.jp/book/b298848.html