【世界の感謝】ペルシアと感謝−母語による感謝表現の違い
同じ仕草であっても所属する文化が異なると、受け取り方が異なります。そのため、良かれと考えて行った行為が、まったく逆の意味に受け取られることがあります。だから、よりよいコミュニケーションのためには、相手の文化を知ることはとても重要です。
母語は文化に影響されるため、母語が異なると背景文化も大きく異なります。文化が異なると、感謝の表現の仕方も異なることは、外国人とコミュニケーションしたことがある人なら分かるのではないでしょうか。
ペルシア文化圏のイランでは、ペルシア語と中国語、英語を母語とする学生(ペルシア語188名、中国語35名、英語35名)を対象にして感謝の表現の違いが調査されました。今回は、その研究(Pishghadam, Zarei, 2012)をご紹介しようと思います。
8種類の感謝の表現
調査は、Discourse Completion Task (DCT)という方法で行われました。これは、様々な程度で義務や感謝を感じる必要がある14の状況を提示して、その状況に置かれた自分を想像して、その時の反応に基づいて回答してもうう自由記述式のアンケートです。
得られた回答は、次の8種類の感謝の表現に基づいてコード化されました。
調査結果
調査結果は、以下のグラフのようになりました。
母語によらず、表現の大半は「お礼」(シンプルな「ありがとう」)でした。
ペルシャ語を母語とする回答者は、他の話者よりも、肯定的感情を表すことを好み、謝罪することを好まないことが分かりました。
英語を母語とする回答者は、他の話者と比べて、「感謝」(深い謝辞)と「強制」(押し付け)が比較的多いことが分かりました。
この結果からすると、ペルシア語話者には、中国語や英語の話者は「感謝しているけど、あまり嬉しそうに見えない」「謝ってばかりいる」というように見えるかもしれません。
また、英語話者が感謝の意味で「強制」を使っていても、ペルシア語や中国語の話者には感謝に聞こえないかもしれないため、注意が必要でしょう。
感謝の仕方を意識しよう
このように、文化が変われば、感謝の表現の仕方も変わります。
この違いは、歴史的経緯の違いから国vs国の大きい単位でもありますし、育ってきた環境の違いにより人vs人の小さい単位でも存在します。
誰かに感謝するときは、「どんなタイプの感謝をしたいのか」を少しだけ考えてみた方がいいかも知れません。
筆者:山本