【論文紹介】SNSで感謝を閲覧すると幸福度が高まる? -Facebookを活用した感謝研究
みなさんはSNSを利用しているでしょうか?
X (旧:Twitter), Facebook, Instagram, TikTokなど、SNSを1つ以上は利用しているという人が多いのではないかと思います。ほとんどのSNSでは、友人や知り合い、あるいは全く知らない人同士のやりとりを閲覧することができます。
以前、他者の感謝を目撃した人は、その感謝の送り手と受け手に対する心理にポジティブな影響があるという研究をご紹介しました。この「感謝の目撃効果」がSNSでも実現したとすれば、より大きな社会的効果があると予想できます。
現実世界における感謝の目撃に比べて、SNS上での他のユーザーによる感謝のやりとりを閲覧することは、積極的なコミュニケーションや社会的努力なしに可能です。また、現実世界よりも多くの人に閲覧してもらうことができます。
今回は、このようなSNSの特徴に着目し、Facebookを用いて行われた感謝の実験についてご紹介しようと思います。
論文紹介:Facebookを用いた感謝閲覧介入
実験内容
Sciara et al. (2021) は、イタリアの若年者49名を対象に、Facebookを活用した実験を行いました。
実験参加者は感謝群と対照群に分けられ、別々のFacebookグループに参加しました。実験参加者たちは、2週間の実験期間中、このFacebookグループを自由に利用するように指示されました。
このFacebookグループには、参加者に紛れて実験協力者たちが参加しており、感謝群では実験協力者たちによって感謝に満ちたやりとりが行われ、対照群で感謝を伴わない形で類似のやりとりが行われました。
実験の前後で「感謝の気持ち」「感謝の表現」「幸福度」が測定され、SNS上で感謝のやりとりを閲覧することが、実験参加の感謝や幸福度にどのような影響があるのかを検証しました。
SNSでの感謝の閲覧は、対面の場の感謝頻度を増やす
検証の結果、他のユーザーによる感謝のやりとりを閲覧していた感謝群は、対照群に比べて対面の場で感謝を表現する頻度が増加していました。
研究者は、感謝のやりとりを閲覧した人の感謝が増加したのは、社会的学習効果によるものだと考察しています。私たちは他者の行動や表現を日々の中で自然と学んでいます。私たちは、他のユーザーの感謝のやりとりを観察することで、その行動を自発的に学び、より多くの感謝を表現することに役立てているのかもしれません。
SNSでの感謝の閲覧は、人生満足度を向上させる
また、感謝群の実験参加者では人生満足度が向上したことが示されました。人生満足度は、心理学において幸福度の指標の一つとして用いられている心理的な尺度です。
つまり、他者同士の感謝に満ちたやりとりをSNS上で閲覧することには、閲覧者自身の感謝の表現を増加させ、幸福度の一つである人生満足度を向上させる効果があることが示唆されました。
まとめ:感謝を発信してみよう
もしあなたが所属する職場やコミュニティなどでグループチャットなどを使用しているのであれば、ぜひ感謝を発信してみるとコミュニティに良い効果があるかもしれません。
あなたの発信した感謝を閲覧したは、感謝の気持ちを増幅させ、ウェルビーイング(人生満足度)も向上する可能性があります。
感謝を贈り合い、それを誰かに見てもらうことは、コミュニティのなかで信頼度や親密度が高まり、感謝の輪がどんどん大きく、強くなっていくことに繋がります。ぜひ積極的に感謝の輪を広げ、幸福度の高いチーム作りをしてみましょう。
(筆者:菅原)
参考文献
Sciara S, Villani D, Di Natale AF and Regalia C (2021) Gratitude and Social Media: A Pilot Experiment on the Benefits of Exposure to Others’ Grateful Interactions on Facebook. Front. Psychol. 12:667052. doi: 10.3389/fpsyg.2021.667052