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ウェルビーイング研究

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ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。
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#研究紹介

人間関係からみた感謝の性質と効果

今回は、感謝は新たな人間関係だけではなく、既存の人間関係についてもポジティブな影響を及ぼすということをご紹介します。 「find-remind-and-bind理論(Algoe, 2008)」という、感謝の効果を人と人との関係性に着目した、感謝研究のなかで有名な理論があります。 かつてのの感謝研究では、感謝とは、感謝する側がされる側から何らかの便益を得た際にうまれる感情であるという考えが主流でした、それは便益の「交換関係」であり、資源分配という経済学的な視点から語られていた

感謝と負債感の関係

感謝は「他者から好意を受け取ることによって引き起こされるポジティブな感情」ですが、表裏一体となって生じる「負債感」という感情があるのをご存じでしょうか? 今回の記事では、負債感に関する研究についてご紹介し、それをふまえ感謝に際して意識したい事について記載します。 負債感とは何か何らかの好意を受け取った際、受け手側は「感謝」と「負債感」を同時に生じるといわれています。 負債感とは、他者から好意を受け取り負債を返済する義務を感じるときに生じるネガティブな対人感情を指します。 こ

感謝の気持ちと資源消費行動の関係

2022年1月に世界経済フォーラムにより公開された「2022年版グローバルリスク報告書」の「今後10年の深刻度から見たグローバルリスクトップ10」では、半数が環境に関わるリスクとなっており、過去と比べて環境問題が深刻であるとみなされています。 「地球環境からもたらされる資源は有限」「個人レベルでも資源の過剰消費を抑えるべき」と理解はできても、実際の行動に落とし込むことは難しいものです。なぜなら私たちは「不公平感を是正したい」「目先の利益を追求したい」といった欲求を持っている

感謝の効果は本当にあるのか?

今回はポジティブ心理学の祖であるセリグマン博士が行った、著名な感謝研究についてご紹介します。 ポジティブ心理学と感謝研究研究についてご説明する前に、感謝研究の歴史について簡単にご紹介させてください。 現在、感謝に関する研究は”ポジティブ心理学”という分野の一環で行われています。 ポジティブ心理学とは、アメリカの心理学会会長であったマーティン・E・P・セリグマン博士によって1998年に創設された学問であり、人間の幸福やそれをもたらす要因についての研究を行う分野です。 ポジ

期待の効果 ピグマリオン効果とは?その活用の検討

ピグマリオン効果とは「ピグマリオン効果」ということばを聞いたことがあるでしょうか。 ピグマリオン効果とは「心から相手に期待をしそれを表明すると、相手がその期待に応えてくれる」というもので、「ポジティブな提案や励ましが自尊心を高め、それにより得られたポジティブなモチベーションにより期待に応えようと努力する」という心理効果であるとされています。 ピグマリオンというのは、ギリシャ神話に登場する王様の名前です。 ピグマリオンは、理想の女性として彫刻した彫像を愛し、人間の女性になる

マインドフルネスとは? マインドフルネスの成り立ちと概要

はじめにみなさんは「マインドフルネス」ということばを聞いたことがあるでしょうか? ストレスや不安を和らげるための方法の一つとして知られており、近年はスマホアプリで気軽に「マインドフルネス瞑想」に取り組めるようになりました。 マインドフルネスとは何か、Chat GPTに質問すると以下のように回答されます。 「現在の瞬間に意識を集中させる状態」というとピンとこないかもしれませんが、この考え方は仏教(禅)に由来しています。「瞑想」というと日本人にとってもイメージしやすいかもしれ

ウェアラブル端末によってウェルビーイングは測定できるか

最近、スマートウォッチやスマートリングなど、歩数や心拍数、呼吸、血圧、睡眠などを測定できるウェアラブル端末を身につけている人をよく目にします。かくいう筆者もスマートウォッチを使用していて、ついPC画面に集中しすぎて呼吸が少なくなっているときは、「深呼吸をしましょう」とよくアラートで注意されています。 ウェアラブル端末は年々発展を遂げており、さまざまな生体情報を測定できるようになっています。心拍数や心拍変動、血圧などの生体情報は、私たちの身体の健康状態を確認できる指標です。近