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ウェルビーイング研究

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ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。
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#主観的幸福感

個人的相対的剥奪感とウェルビーイング

はじめに今回の記事では、ウェルビーイング研究で有名な前野隆先生が共著となっている論文から「個人的相対的剥奪感」の研究についてご紹介します。 こちらの記事で、他人と自分を比較する「社会的比較」をご紹介しました。社会的比較はいくつかの次元に分けることができ、場合によっては私たちにポジティブな影響を及ぼすことが分かっています。 今回ご紹介する個人的相対的剥奪感は、他者と比較することで生じる感情のことであり、社会的比較の結果として引き起こされるネガティブ感情のひとつです。 まず

日本人の幸福感の測り方 | 日本版主観的幸福感尺度と協調的幸福感尺度のご紹介

はじめに前回の記事で、World Happiness Report 2023から日本の幸福度についてご紹介しました。 今回の記事では、日本における主要な幸福感の測定に関する研究をご紹介し、それらを通じて「日本人の幸福感をより正確に測るにはどうしたらよいか」を整理していこうと思います。 【ご紹介する2つの尺度】 日本版主観的幸福感尺度Subjective Happiness Scale(SHS) 4項目で成人の幸福の主観的評価が可能 世界各国で翻訳されており、国際比較

【基礎知識】心理学におけるウェルビーイング|主観的ウェルビーイングと心理的ウェルビーイングの定義と成り立ち

幸福の意味でのウェルビーイングやハピネスの研究は、ギリシャ哲学におけるアリストテレスの最高善にその起源があります。 心理学研究は1960年代から始まり、Wilson(1967)は数多くの文献をレビューし、「幸福な人は、若く、健康で、高学歴で、高収入で、外向的で、楽観的で、心配がなく、宗教的で、結婚していて、自尊心が高く、仕事ができる人である。」と結論付けました。しかし、1980年代中頃までの2000年間、理論的にはほとんど進歩していませんでした(Diener, 1984)。