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【論文紹介】感謝の目撃効果2−感謝を目撃した人は幸せになる

別の記事で、Algoe教授が2020年に発表した「感謝の目撃」の研究をご紹介しました。今回は、Walsh氏らによって2022年に発表された「感謝の目撃」の研究をご紹介します。

※本記事は、スマホアプリ NEC Thanks Card に掲載した内容を転載しています。
2024年5月は、アプリ用に執筆した記事で毎日更新しています。

Algoe氏の研究では、感謝の目撃効果を援助行動などの「行動」で測定しており、「心理」への影響を測定していませんでした。そこで、Walsh氏らは、主観的ウェルビーイング(肯定的感情、人生満足度)などの心理指標への「感謝の目撃」の影響を実験的に確かめました。


送り手-受け手-目撃者フレームワーク(Actor-Target-Witness Framework)

実験の対象者を、感謝する人(送り手)、感謝する人(受け手)、感謝を目撃する人(目撃者)の3種類に分けるのはAlgoe氏の研究と同様です。しかし、Walsh氏らは、感謝する人を①思い出すだけのグループと②相手に伝えるグループに分けて、次の4つの状況について対象者のグループを作りました。

図1.Actor-Target-Witness Framework

これらのグループと統制グループについて、「感謝の手紙」実験を行いました。

「感謝の手紙」とは、特定の相手への感謝を手紙に記して、それを相手の前で読み上げる、という実験です。長文の手紙を書き、しかもそれを相手の目の前で読み上げなければならないので、日本人からするとかなり心理的な負荷の高い実験と言えるでしょう。

統制グループには、最近見たテレビ番組のあらすじを書いてもらったそうです。

「目撃」としては、目撃者グループが第三者として手紙を読むようにしました。

感謝を目撃しても、感謝の気持ちは高まらない

感謝を①思い出した人や②共有した人の特性感謝(感謝の感じやすさ)が向上することは、これまでの多くの感謝研究で指摘されてきました。また、感謝を③受け取った人の特性感謝が改善するのは、「感謝への感謝」を感じるためです。これらは、特に不思議な点はありません。

しかし、意外なことに、感謝を④目撃した人の特性感謝は、向上しないどころか低下してしまいました

図2.「感謝の手紙」実験の結果

Walsh氏らは、目撃した人の特性感謝が低下した原因は、感謝を目撃することで自分と比較する「社会的比較」が起きてしまったからではないかと考察されています。例えば、「あの人はあんなに感謝されているのに、自分はなんてだめなんだ」と考えてしまうことが社会的比較に相当します。

しかし、実験後のフォローアップ調査によって、目撃した人は肯定的感情と人生満足度が向上したことが確認されています。

つまり、感謝を目撃した人は、長期的には主観的ウェルビーイングが向上しました。

感謝を見て、感謝を味わう

以上の結果から、感謝の目撃には、短期的に(特性感謝ではなく)高揚感を高め、長期的に主観的ウェルビーイングを高める効果があることが分かりました。ただし、感謝を目撃しても、自分と比較してはいけません。

感謝アプリでは、タイムラインで他の利用者の感謝されている様子を目撃できるようになっています。皆さんも、自分のウェルビーイングを高めるために、なるべく感謝を目撃しましょう!

そのとき、自分と比較するのではなく、「よかったね~」「いいことしているなぁ」「そんなことしてたんだぁ」などと感謝を味わうようにしてください。

味わうことで得られた高揚感が、あなたが幸せを感じる一助になることでしょう。

筆者:山本

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参考文献

  1. Walsh, L. C., Regan, A., & Lyubomirsky, S. (2022). The role of actors, targets, and witnesses: Examining gratitude exchanges in a social context. The Journal of Positive Psychology, 17(2), 233–249. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17439760.2021.1991449