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ウェルビーイング研究

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ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。
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2024年2月の記事一覧

【基礎知識】自己超越|5つのアプローチとウェルビーイング

人間の基本的欲求を5階層で表したマズローの欲求階層説は有名ですが、晩年のマズローが第6階層を提唱していたことは、知らない方もいるかもしれません。マズローは、生理的欲求・安全の欲求・所属の欲求・承認欲求・自己実現欲求に続く第6階層として自己超越欲求を提唱していた…とされています。 マズローは、「人間がよい人生、幸せな人生を生きるために必要なものを発見する(中村, 1998)」ことを目的として、世界を自己と環境のみで考える誤った二分法を正すために、自己と環境あるいは自己と他者の

【論文紹介】創造性がウェルビーイングを高める

ウェルビーイングが創造性を高めるという研究結果はよく知られていますが、創造性がウェルビーイングを高めるという結果はあまり知られていません。 ウェルビーイングといっても、創造性に影響を及ぼすことが確認されているのはポジティブ感情やポジティブ気分(Amabile, et al., 2005)で、主観的ウェルビーイングそのものではありませんでした。 そして、多くの研究は西洋文化圏で実施されており、感謝研究のように、東洋でも同様の結果になるとは限りません。 そこで、今回は、Ta

人と動物との関わりにおけるウェルビーイング ~愛情ホルモン「オキシトシン」に着目した研究紹介~

はじめにペットを飼っている方の中には、「飼い犬と暮らしているおかげで健康でいられる気がする」、「飼い猫と触れ合っていると癒される」といったように、ペットとの関わり合いが自身にポジティブな影響をもたらしている感覚がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 かくいう筆者も、犬猫のように触れ合える生き物ではありませんがペットを飼っており、ペットと関わることで幸福度が高まっているように感じています。 こういった幸福感には、“愛情ホルモン”や“幸福ホルモン”などと呼ばれることのある

【論文紹介】知恵 (wisdom) | 知恵は私たちのウェルビーイングを高めるか?

みなさん、「知恵」という言葉に対して、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか? 一般に、知恵というものは年齢、あるいは人生経験を積み重ねる中で培われるものと考えられる傾向にあります。また、「生活の知恵」などのように、日常のちょっとした工夫に対して「知恵」ということもあります。さらに、仏教の文脈では「真理をみきわめる心の作用」として「智慧」という言葉が用いられています。 辞書で「知恵」の意味を調べてみると、「物事の道理を判断し処理していく心の働き。物事の筋道を立て、計画