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ウェルビーイング研究

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ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。
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#論文紹介

インターネットの普及とウェルビーイング

はじめに日本において2021年のスマートフォンの個人保有割合は68.5%となっており、インターネット利用率は82.9%となっています。SNSの利用率も特に若い世代において高くなっています(図1)。 こういったなか、インターネットの利用がウェルビーイングに何らかの影響を及ぼすのではないかと懸念される方もいらっしゃるかもしれません。 以前こちらの記事で、「社会的比較」に関する研究をご紹介しました。SNSの利用目的や利用の仕方によっては、他人と自分を比べる社会的比較が生じやすく

“かわいさ”は人にどのような影響をもたらすか

はじめに“電車で赤ちゃんと目があった時”や“スマートフォンで子猫の写真を見た時”など、かわいいものを見た時に思わず笑顔になったり、少し気分が良くなったという体験はありますか? そのような“かわいさ”に関する定義や体験について説明するベビースキーマ(baby schemaもしくはKindchenschema)と呼ばれる概念があります。今回はベビースキーマと幸福感の関係についてご紹介したいと思います。 ベビースキーマとは“かわいさ”に関する心理的研究は、ほとんどがベビースキーマ

【論文紹介】感謝の目撃効果2−感謝を目撃した人は幸せになる

別の記事で、Algoe教授が2020年に発表した「感謝の目撃」の研究をご紹介しました。今回は、Walsh氏らによって2022年に発表された「感謝の目撃」の研究をご紹介します。 Algoe氏の研究では、感謝の目撃効果を援助行動などの「行動」で測定しており、「心理」への影響を測定していませんでした。そこで、Walsh氏らは、主観的ウェルビーイング(肯定的感情、人生満足度)などの心理指標への「感謝の目撃」の影響を実験的に確かめました。 送り手-受け手-目撃者フレームワーク(Ac

個人的相対的剥奪感とウェルビーイング

はじめに今回の記事では、ウェルビーイング研究で有名な前野隆先生が共著となっている論文から「個人的相対的剥奪感」の研究についてご紹介します。 こちらの記事で、他人と自分を比較する「社会的比較」をご紹介しました。社会的比較はいくつかの次元に分けることができ、場合によっては私たちにポジティブな影響を及ぼすことが分かっています。 今回ご紹介する個人的相対的剥奪感は、他者と比較することで生じる感情のことであり、社会的比較の結果として引き起こされるネガティブ感情のひとつです。 まず

【論文紹介】感謝の8つの側面とその測り方

はじめに感謝はポジティブ感情のひとつです。ポジティブ感情には感謝以外にも様々なものがあり、例えばポジティブ感情とネガティブ感情を測定するPANASという尺度では、「活気のある」「誇らしい」「わくわくした」といった項目で評価されます。 そんなポジティブ感情のなかでも、感謝は他者との関わり合いの中で生じるものであるため、社会や組織の運営という観点で特に注目すべき感情であるといえるでしょう。 感謝の気持ちを抱いたり、その気持ちを伝えたりすることで、幸福感の向上、抑うつ状態の軽減と

休暇中の過ごし方とウェルビーイング ~どんな風に過ごすとウェルビーイングが高まるか~

早いもので2023年も残すところわずかとなりました。 本年は私たちの記事をご覧いただきありがとうございました。 8月に開始した私たちのnoteは、本記事で20記事目となります。(自己紹介記事を除く) ウェルビーイングに関する基礎知識や、みなさんにぜひご覧になっていただきたい情報がかなりまとまってきたと思います。年末年始のお供としてもご覧いただけたら幸いです。 さて、年末年始は、長めに休暇を取得してゆっくり過ごす、ご家族や友人と会う、地元の行事に参加するといった方も多いので