記事一覧
希望とウェルビーイング | 希望に関する心理学研究とウェルビーイングとの関連
みなさんは、ご自身の生活が今後良くなっていくと希望を抱くことは出来ているでしょうか?
内閣府による世論調査では、1968年から現在に至るまで「今後の家庭の生活は良くなっていく」と回答する人の割合は、大きく減少しています。特に、オイルショックやバブル崩壊のタイミングで割合は大きく低下しており、21世紀に突入して以来、基本的に10%を下回っています。
「生活が良くなっていく」という回答の割合が低迷
【論文紹介】消費における主観的ウェルビーイング4類型尺度のご紹介
はじめに本記事では、西洋的な近代合理主義から抜け落ちている概念を組み込んだ新たなウェルビーイング尺度として「主観的ウェルビーイング4類型尺度」をご紹介します。以前ご紹介した協調的幸福感とは異なる観点になりますので、ぜひご一読ください。
これまでの記事でご紹介してきたウェルビーイングに関する研究や尺度はほとんど欧米のもので、西洋的な思想に基づいていると考えられます。そのため、日本人にフィットするよ
【基礎知識】VIAの強みとウェルビーイングの関係
以前の記事で、職場へのポジティブ心理学介入をご紹介しました。その中で、「強み」に基づいたストレングス介入があることを簡単に説明しました。そして、有名な強みの測定方法には、VIA (Value In Action) と Clifton’s Strengthsがあることもご紹介しました。
今回は、VIAに基づくストレングス介入の原点となった研究を2つほどご紹介したいと思います。
VIAは、VIA
睡眠とウェルビーイング | 睡眠は身体的・精神的・社会的にウェルビーイングと関連する
現代社会において、私たちは仕事や責任、娯楽などに追われ、睡眠は犠牲にされがちな要素の一つと言えるでしょう。実際、厚生労働省によると1976年から2011年までの縦断的な調査から、日本人の睡眠時間は減少傾向にあります。
ほとんどの人にとって睡眠は1日の20%から40%を占める重要な要素と言えます。睡眠は、疲労回復はもちろんのこと、認知機能、身体的機能、メンタルヘルス、幸福感など、多岐にわたる生理的
「共感」とウェルビーイング
はじめに今回は、ウェルビーイングの要素のひとつである「共感」についてご紹介します。
これまでの記事で、ウェルビーイングの構成要素がどのように捉えられているか、もしくは個別の要素はどのような概念であり、どのような研究がされているのか、といったことをご紹介してきました。
まずは、ウェルビーイングの構成要素についておさらいしてから、共感の位置付けや概念の解説をしていこうと思います。
ウェルビーイングの
【基礎知識】エンゲージメントとウェルビーイングの関係|エンゲージメントの調整効果・媒介効果・決定要因
Gallup社の「State of the Global Workplace Report 2024」によると、日本の従業員エンゲージメントのスコアは6%で、香港とならび141カ国中で最下位でした。2017年以降、日本の従業員エンゲージメントは常に5~6%であり、日本の企業では従業員エンゲージメントの向上が重要な課題の一つとなっています。
一方、ウェルビーイングとエンゲージメントは関連した概念だ
サードプレイスとウェルビーイング | サードプレイスの利用がウェルビーイングを高める
みなさんは自宅や職場、学校などの他に、自分の居場所だと思えるような場所はありますか?
現代の社会において、多くの人々が日常生活における忙しさやストレスに直面しています。仕事や家庭における責任やタスクに追われ、自分自身をリフレッシュさせるための時間や場所が足りないと感じている人も多いのではないでしょうか?
自宅や職場、学校ではない「第3の居場所」は、「サードプレイス」と呼ばれ、近年、注目を集めて
インターネットの普及とウェルビーイング
はじめに日本において2021年のスマートフォンの個人保有割合は68.5%となっており、インターネット利用率は82.9%となっています。SNSの利用率も特に若い世代において高くなっています(図1)。
こういったなか、インターネットの利用がウェルビーイングに何らかの影響を及ぼすのではないかと懸念される方もいらっしゃるかもしれません。
以前こちらの記事で、「社会的比較」に関する研究をご紹介しました。
【基礎知識】ウェルビーイングと収入の関係|カーネマンの研究結果の反証と解釈
直感的には、貧乏よりも裕福な方が幸せだと考えられるため、収入が多ければ多いほどウェルビーイングは高いと考えられます。もちろん、生活が困窮する収入よりは、生活に困らない程度の収入があった方が幸せなのは間違いないでしょう。
これに対し、Kahneman & Deaton (2010) は、ある一定上の収入を超えると幸せを感じにくくなっていくという有名な調査結果を示しました。この結果は、ウェルビーイン
健康と幸福感を高める自然との触れ合いとは?
はじめに自然環境とウェルビーイングの関係について、こちらの記事でご紹介をしました。
今回ご紹介するのは、ウェルビーイングを高める自然環境との関わり合い方を具体的な自然体験として提示した論文です。自然体験が人の健康に必要なものであるということを示すエビデンスの一つであり、引用数も多い論文です。ウェルビーイングのみならず、環境教育や環境保全に興味がある方もぜひご一読ください。
自然環境は人の健康を増
食事とウェルビーイング | ウェルビーイングを高める食事とは?
1990年代後半に提唱されたポジティブ心理学は幸福や満足感、強みなどに焦点を当て、人間の心理的な繁栄を目指した研究が推進されてきました。感謝やマインドフルネス、強みなど、さまざまなアプローチから、私たちのウェルビーイングを向上させるための介入方法が検討されてきました。
近年では、食に関する要因がウェルビーイングに高めるという新たなパターンが発見され、ポジティブ心理学領域において食品や食習慣などに
【基礎知識】人間関係を構築・維持する方法|黙示録の四騎士とサウンド・リレーションシップ・ハウス理論
PERMA理論やSPIRE理論の「R(relationship)」や、心理的ウェルビーイングの6要素の1つが「積極的な他者関係(positive relationship)」などから分かるように、ウェルビーイングには人間関係が欠かせません。(詳細は、以下の記事を参照してください)
今日、よく参照される人間関係の基盤的な研究の1つに、J. Gottmanの研究があります。Gottmanは、恋人同士
【論文紹介】高齢者のスポーツ観戦とウェルビーイング
はじめに「スポーツ選手やアーティストを熱心に応援することで元気をもらえた」、「一緒に盛り上がる仲間がいることで充実感を感じた」、そんな経験をしたことはあるでしょうか?
近年、介護の現場での取り組みとして、地元のスポーツチームを応援するプログラムを取り入れることで、高齢者の活力を高めることができた、などというニュースを見かけることもあります。
日本ではそのような活動を「推し活」などと呼ぶこともあり
【論文紹介】職場でフィードバックを上手く活用するには - フィードバック研究の知見から考える
職場において、「フィードバック」は大きな意味を持つコミュニケーションの一つと言えるでしょう。日常業務における会話から業績評価まで、フィードバックが行われる機会は多くあります。
上手にフィードバックすることが出来れば、上司と部下の間で信頼関係を築きつつ、部下のパフォーマンス向上が期待できます。部下も成長を感じながら、モチベーション高く仕事に取り組むことが出来るかもしれません。
一方で、「どう褒め
謙虚さと心理的ウェルビーイング|謙虚さの定義、謙虚さと超越性と社会的活動の関係
謙虚さがウェルビーイングと関係していることは、ポジティブ心理学の初期から研究されてきました(Seligman & Csikszentmihalyi, 2000)。また、最近は、力強いリーダーシップに対して、謙虚なリーダーシップも見直されています(Owns & Heckman, 2012)。しかし、謙虚さは必ずしもポジティブなものではないという考えも根強く残っています。
特に、社会的活動の文脈で批
“かわいさ”は人にどのような影響をもたらすか
はじめに“電車で赤ちゃんと目があった時”や“スマートフォンで子猫の写真を見た時”など、かわいいものを見た時に思わず笑顔になったり、少し気分が良くなったという体験はありますか?
そのような“かわいさ”に関する定義や体験について説明するベビースキーマ(baby schemaもしくはKindchenschema)と呼ばれる概念があります。今回はベビースキーマと幸福感の関係についてご紹介したいと思います。