記事一覧
【基礎知識】人間関係を構築・維持する方法|黙示録の四騎士とサウンド・リレーションシップ・ハウス理論
PERMA理論やSPIRE理論の「R(relationship)」や、心理的ウェルビーイングの6要素の1つが「積極的な他者関係(positive relationship)」などから分かるように、ウェルビーイングには人間関係が欠かせません。(詳細は、以下の記事を参照してください)
今日、よく参照される人間関係の基盤的な研究の1つに、J. Gottmanの研究があります。Gottmanは、恋人同士
【論文紹介】高齢者のスポーツ観戦とウェルビーイング
はじめに「スポーツ選手やアーティストを熱心に応援することで元気をもらえた」、「一緒に盛り上がる仲間がいることで充実感を感じた」、そんな経験をしたことはあるでしょうか?
近年、介護の現場での取り組みとして、地元のスポーツチームを応援するプログラムを取り入れることで、高齢者の活力を高めることができた、などというニュースを見かけることもあります。
日本ではそのような活動を「推し活」などと呼ぶこともあり
【論文紹介】職場でフィードバックを上手く活用するには - フィードバック研究の知見から考える
職場において、「フィードバック」は大きな意味を持つコミュニケーションの一つと言えるでしょう。日常業務における会話から業績評価まで、フィードバックが行われる機会は多くあります。
上手にフィードバックすることが出来れば、上司と部下の間で信頼関係を築きつつ、部下のパフォーマンス向上が期待できます。部下も成長を感じながら、モチベーション高く仕事に取り組むことが出来るかもしれません。
一方で、「どう褒め
謙虚さと心理的ウェルビーイング|謙虚さの定義、謙虚さと超越性と社会的活動の関係
謙虚さがウェルビーイングと関係していることは、ポジティブ心理学の初期から研究されてきました(Seligman & Csikszentmihalyi, 2000)。また、最近は、力強いリーダーシップに対して、謙虚なリーダーシップも見直されています(Owns & Heckman, 2012)。しかし、謙虚さは必ずしもポジティブなものではないという考えも根強く残っています。
特に、社会的活動の文脈で批
“かわいさ”は人にどのような影響をもたらすか
はじめに“電車で赤ちゃんと目があった時”や“スマートフォンで子猫の写真を見た時”など、かわいいものを見た時に思わず笑顔になったり、少し気分が良くなったという体験はありますか?
そのような“かわいさ”に関する定義や体験について説明するベビースキーマ(baby schemaもしくはKindchenschema)と呼ばれる概念があります。今回はベビースキーマと幸福感の関係についてご紹介したいと思います。
Emotional Intelligence (EI) | 感情知能の持つ影響・効果
みなさんは「Emotional Intelligence (EIまたはEQ, 感情知能) 」という概念をご存じでしょうか?
EIとは、簡単に言えば「自分や他者の感情状態を認識し、上手く活用する能力」のことです。EIの概念自体は20~30年前から提唱され、欧米のビジネスシーンを中心に活用が進められていますが、ここ数年でEIはさらに注目を集めています。
EIは、私たちの日常生活や職場において、どの
【論文紹介】職場でのポジティブ心理学介入|介入手法の整理とメタ分析の結果
ウェルビーイングやエンゲージメントやその他の仕事のアウトカムを改善する介入方法が、ポジティブ心理学ではよく研究されています。今回は、Donalsonら(2019)による仕事のポジティブ心理学介入(PPIs=Positive Psychology Interventions)のメタ分析の結果についてお話ししたいと思います。なお、個人向けPPIsは、①自尊心介入、②感謝介入、③強み介入の3つです。
【論文紹介】ノスタルジーを感じてウェルビーイングに -感謝感情による媒介効果
みなさんは日常のふとした瞬間に、過去のことを思い出して懐かしさを覚えたり、心が温かくなるような経験をしたことはありますか?
今回は、そんな「ノスタルジー」を感じることと、感謝やウェルビーイング(幸福感)との関係を調べた研究についてご紹介します。
ノスタルジーの効果ノスタルジーとは、過去の出来事や人々について思い出したり、過去の自分について思い出すこと通して、懐かしさや切なさを感じることを意味し
【論文紹介】日本人のウェルビーイングにおける感謝と自尊心 -感情体験と一日の評価
現在、ポジティブ心理学という研究分野を中心に、「感謝」と「ウェルビーイング」の関係性に焦点を当てた研究が増えています。
特に、アメリカを中心に「感謝の感じやすさ(感謝の気質)が高いほどウェルビーイングが高い」、「感謝をする介入をするとウェルビーイングが高まる」などの研究結果が報告されています。
しかし、上記のようなことを日本人に対して検証しても、なかなか同じようには再現されないことが指摘されて
【論文紹介】感謝と負債感と向社会行動 -神への感謝と人への感謝
感謝をすることには向社会行動(=社会のためになる行動)を促進する効果があると、心理学研究では言われています。
しかし、なぜ感謝をすることが社会のための行動につながるのか、明確な理由は明らかになっていません。Nelson et al. (2023) では、「感謝」と「負債感(恩義)」をきちんと分けて考えることで、向社会行動への効果を明らかにしようとしています。
「感謝」と「負債感(恩義)」これま
【論文紹介】感謝は脅威を弱め、挑戦心を高める -生理学的反応から見る感謝の効果
あなたは難しいタスクをしなければならないとき、「やってやろう!」と挑戦心に燃えるか、「失敗したらどうしよう…」と恐怖や脅威を感じてしまうか、どちらが多いでしょうか?
どうせならば、挑戦心をもって取り組めると、気持ちも結果も良い方向に向かいそうですね。
今回は、そんな精神的にストレスのかかるタスクを行うときに、感謝にはどのような効果があるのか、生理学的な分析から検証した研究をご紹介しようと思いま
【論文紹介】エピソードを記録してウェルビーイングに -エピソード記録が、欲求充足・感謝・セルフコンパッションに繋がる
近年、国内外で非常に注目されるウェルビーイングですが、WHOでは「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた(well-being)状態にあること」と言及されています。
なかでも、精神的なウェルビーイングは「幸福」や「充実」などと捉えられており、ポジティブ心理学を中心にウェルビーイング高める方法の研究がされています。
【論文紹介】感情表現のモチベーションと満足度 -感謝と怒りの有用性信念
みなさんはコミュニケーションをする上で、感情表現をすることは有用だと思いますか?
相手に怒りを伝えることは役に立つでしょうか?相手に感謝を伝えることは役に立つでしょうか?
感情を表現することが役に立つと考える人ほど、積極的に感情を表現すると思います。逆に、感情表現することは有用ではないと考える人は、感情をあまり表に出さないかもしれません。
このような感情を表現する動機(モチベーション)に関わ
【論文紹介】感謝の気持ちと自然環境 -感謝の気持ちが環境保護意識に繋がる?
近年、環境保護や持続可能性について語られることが非常に多くなってきました。これからの世界を考えるにあたり、私たちが環境や自然とどのような関係を築くかは、一つの重要な視点と言えます。
私たちの自然環境に対する意識を考えるなかで、「感謝の気持ち」がどう影響を与えるのか、ということに着目した研究があるので、ご紹介いたします。
自然とのつながりの意識と自己超越的な感情としての感謝私たちの自然や環境保護
【論文紹介】感謝を伝えるスキルを身につける効果 -感謝表出スキルと孤独感
みなさんは「ソーシャルスキル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ソーシャルスキルとは、個人が円滑な対人関係を維持するために、相手に対して効果的に反応する際に用いる行動のスキルを指します。もともと社会心理学等の分野における用語ですが、コミュニケーション能力強化や子どもの教育といった観点において、一般的にも用いられています。
例えば、職場の同僚と会話をしている時、その場の雰囲気や相手の様子
【論文紹介】感謝することで協力できる -感謝を用いた囚人のジレンマ実験
「囚人のジレンマ」というものをご存じでしょうか?
簡単にいえば、お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなるジレンマを指します。
このようなジレンマによって、協力しにくい状況のなかで「感謝を伝える」ことが協力関係にどのような影響を与えるか検証した研究をご紹介したいと思います。
囚人のジレンマ実験こちらの研究では、囚