NECソリューションイノベータ株式会社

NECソリューションイノベータは、NECグループの社会価値創造をICT(情報通信技術)で担う国内最大規模のシステム・インテグレータです。研究開発部門が組織のウェルビーイングについて研究結果や最新トレンドを発信します。 問い合わせ note_necsi@nes.jp.nec.com

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マガジン

  • ウェルビーイング研究

    ウェルビーイングに関連した研究の研究者による解説記事を集めています。ウェルビーイングをもう少し詳しく知りたい人に向けて、毎週金曜日に更新・追加していきます。

  • 感謝研究

    感謝の研究に関する記事をまとめています。記事は、スマホアプリNEC Thanks Cardに掲載した内容を修正して転載したものです。

リンク

記事一覧

【基礎知識】徳倫理学の初歩

芸術とウェルビーイング | 芸術鑑賞や芸術制作が私たちのウェルビーイングに与える影響とは?

【論文紹介】「意味ある仕事」を測定するWAMI

【基礎知識】セルフ・コンパッション概論

希望とウェルビーイング | 希望に関する心理学研究とウェルビーイングとの関連

【論文紹介】消費における主観的ウェルビーイング4類型尺度のご紹介

【基礎知識】VIAの強みとウェルビーイングの関係

睡眠とウェルビーイング | 睡眠は身体的・精神的・社会的にウェルビーイングと関連する

【基礎知識】エンゲージメントとウェルビーイングの関係|エンゲージメントの調整効果・媒介効果・決定要因

サードプレイスとウェルビーイング | サードプレイスの利用がウェルビーイングを高める

インターネットの普及とウェルビーイング

【基礎知識】ウェルビーイングと収入の関係|カーネマンの研究結果の反証と解釈

健康と幸福感を高める自然との触れ合いとは?

食事とウェルビーイング | ウェルビーイングを高める食事とは?

【基礎知識】人間関係を構築・維持する方法|黙示録の四騎士とサウンド・リレーションシップ・ハウス理論

【基礎知識】徳倫理学の初歩

徳倫理(virtue ethics)は、アリストテレスを起源の1つとする倫理学で、アリストテレス倫理学ではユーダイモニア(善き生、人間の幸福、人間の生の開花flourishing)を徳倫理の核心的概念と考える人もいます(村松, 2017)。一方、心理的ウェルビーイングはユーダイモニアを心理学的に定義した概念です。すなわち徳倫理と心理的ウェルビーイングは祖を同じくしています。そのため、徳倫理学での議論は、ウェルビーイングに関係する可能性があります。(心理的ウェルビーイングについ

芸術とウェルビーイング | 芸術鑑賞や芸術制作が私たちのウェルビーイングに与える影響とは?

みなさんは日常のなかで、芸術に触れることはあるでしょうか? 芸術やアートと聞くと、絵画や彫刻などをイメージするかもしれませんが、それらばかりではありません。音楽を聴いたり、絵を描いたり、小説を読んだり、もっと身近なものも芸術との関わりと言えるでしょう。 このような芸術との関わりは、私たちの心や身体にどのような影響を与えるでしょうか。近年の研究では、芸術との触れ合いが、単なる娯楽を超えて、私たちの健康やウェルビーイングに関連することが示されています。 本記事では、芸術を鑑

【論文紹介】「意味ある仕事」を測定するWAMI

はじめにみなさんは働く上で何を重要視しているでしょうか。“勤務時間に対し十分な給与が得られる”、“休暇がとりやすい”、“希望した場所で働ける”などの「働きやすさ」はもちろんのこと、自分の仕事に対して感じる“やりがい”や“誇り”といった「働きがい」も重要に感じるのではないでしょうか。 ワーク・エンゲージメントの文脈で紹介されることの多い『仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)』では、「仕事の資源」と「個人の資源」がワーク・エンゲージメントを高め、ポジティブなアウトカムにつ

【基礎知識】セルフ・コンパッション概論

セルフ・コンパッション(self-compassion)は、主に自分への思いやりの心を意味し、2003年に提唱されて以来、20年で急速に研究が増えている研究テーマです。様々な研究によって、概念定義、測定方法、他の概念への効果が確立されつつあり、開発された心理療法は様々な場面への適用が試されています。それらの研究の中で、ウェルビーイングとの関連も明らかにされてきています。 今回は、セルフ・コンパッションの提唱者であるNeffが総論(Neff, 2023)として全体像をまとめて

希望とウェルビーイング | 希望に関する心理学研究とウェルビーイングとの関連

みなさんは、ご自身の生活が今後良くなっていくと希望を抱くことは出来ているでしょうか? 内閣府による世論調査では、1968年から現在に至るまで「今後の家庭の生活は良くなっていく」と回答する人の割合は、大きく減少しています。特に、オイルショックやバブル崩壊のタイミングで割合は大きく低下しており、21世紀に突入して以来、基本的に10%を下回っています。 「生活が良くなっていく」という回答の割合が低迷している背景には、さまざまな要因があると考えることが出来そうですが、全体として、

【論文紹介】消費における主観的ウェルビーイング4類型尺度のご紹介

はじめに本記事では、西洋的な近代合理主義から抜け落ちている概念を組み込んだ新たなウェルビーイング尺度として「主観的ウェルビーイング4類型尺度」をご紹介します。以前ご紹介した協調的幸福感とは異なる観点になりますので、ぜひご一読ください。 これまでの記事でご紹介してきたウェルビーイングに関する研究や尺度はほとんど欧米のもので、西洋的な思想に基づいていると考えられます。そのため、日本人にフィットするような幸福感を定義・測定するための新たなアプローチが試みられています。そんな試みの

【基礎知識】VIAの強みとウェルビーイングの関係

以前の記事で、職場へのポジティブ心理学介入をご紹介しました。その中で、「強み」に基づいたストレングス介入があることを簡単に説明しました。そして、有名な強みの測定方法には、VIA (Value In Action) と Clifton’s Strengthsがあることもご紹介しました。 今回は、VIAに基づくストレングス介入の原点となった研究を2つほどご紹介したいと思います。 VIAは、VIA Institute on Characterにアカウントを作成すると無料で測定す

睡眠とウェルビーイング | 睡眠は身体的・精神的・社会的にウェルビーイングと関連する

現代社会において、私たちは仕事や責任、娯楽などに追われ、睡眠は犠牲にされがちな要素の一つと言えるでしょう。実際、厚生労働省によると1976年から2011年までの縦断的な調査から、日本人の睡眠時間は減少傾向にあります。 ほとんどの人にとって睡眠は1日の20%から40%を占める重要な要素と言えます。睡眠は、疲労回復はもちろんのこと、認知機能、身体的機能、メンタルヘルス、幸福感など、多岐にわたる生理的・心理的機能に関与するとされます。 私たちのウェルビーイングのさまざまな面にお

「共感」とウェルビーイング

はじめに今回は、ウェルビーイングの要素のひとつである「共感」についてご紹介します。 これまでの記事で、ウェルビーイングの構成要素がどのように捉えられているか、もしくは個別の要素はどのような概念であり、どのような研究がされているのか、といったことをご紹介してきました。 まずは、ウェルビーイングの構成要素についておさらいしてから、共感の位置付けや概念の解説をしていこうと思います。 ウェルビーイングの構成要素としての共感今回ご紹介するウェルビーイングは幸福としてのウェルビーイング

【基礎知識】エンゲージメントとウェルビーイングの関係|エンゲージメントの調整効果・媒介効果・決定要因

Gallup社の「State of the Global Workplace Report 2024」によると、日本の従業員エンゲージメントのスコアは6%で、香港とならび141カ国中で最下位でした。2017年以降、日本の従業員エンゲージメントは常に5~6%であり、日本の企業では従業員エンゲージメントの向上が重要な課題の一つとなっています。 一方、ウェルビーイングとエンゲージメントは関連した概念だと考えられます。例えば、PERMAやSPIREといったポジティブ心理学のウェルビ

サードプレイスとウェルビーイング | サードプレイスの利用がウェルビーイングを高める

みなさんは自宅や職場、学校などの他に、自分の居場所だと思えるような場所はありますか? 現代の社会において、多くの人々が日常生活における忙しさやストレスに直面しています。仕事や家庭における責任やタスクに追われ、自分自身をリフレッシュさせるための時間や場所が足りないと感じている人も多いのではないでしょうか? 自宅や職場、学校ではない「第3の居場所」は、「サードプレイス」と呼ばれ、近年、注目を集めています。このサードプレイスの概念は、都市計画や地域活性などを中心に議論され、最近

インターネットの普及とウェルビーイング

はじめに日本において2021年のスマートフォンの個人保有割合は68.5%となっており、インターネット利用率は82.9%となっています。SNSの利用率も特に若い世代において高くなっています(図1)。 こういったなか、インターネットの利用がウェルビーイングに何らかの影響を及ぼすのではないかと懸念される方もいらっしゃるかもしれません。 以前こちらの記事で、「社会的比較」に関する研究をご紹介しました。SNSの利用目的や利用の仕方によっては、他人と自分を比べる社会的比較が生じやすく

【基礎知識】ウェルビーイングと収入の関係|カーネマンの研究結果の反証と解釈

直感的には、貧乏よりも裕福な方が幸せだと考えられるため、収入が多ければ多いほどウェルビーイングは高いと考えられます。もちろん、生活が困窮する収入よりは、生活に困らない程度の収入があった方が幸せなのは間違いないでしょう。 これに対し、Kahneman & Deaton (2010) は、ある一定上の収入を超えると幸せを感じにくくなっていくという有名な調査結果を示しました。この結果は、ウェルビーイングと収入の関係についての定説となっていきました。 しかしながら、近年では少し異

健康と幸福感を高める自然との触れ合いとは?

はじめに自然環境とウェルビーイングの関係について、こちらの記事でご紹介をしました。 今回ご紹介するのは、ウェルビーイングを高める自然環境との関わり合い方を具体的な自然体験として提示した論文です。自然体験が人の健康に必要なものであるということを示すエビデンスの一つであり、引用数も多い論文です。ウェルビーイングのみならず、環境教育や環境保全に興味がある方もぜひご一読ください。 自然環境は人の健康を増進するのか?人々が自然環境と触れ合うことは、健康に良い影響をもたらすと考えられて

食事とウェルビーイング | ウェルビーイングを高める食事とは?

1990年代後半に提唱されたポジティブ心理学は幸福や満足感、強みなどに焦点を当て、人間の心理的な繁栄を目指した研究が推進されてきました。感謝やマインドフルネス、強みなど、さまざまなアプローチから、私たちのウェルビーイングを向上させるための介入方法が検討されてきました。 近年では、食に関する要因がウェルビーイングに高めるという新たなパターンが発見され、ポジティブ心理学領域において食品や食習慣などに着目した研究が増加しています。食事が身体的な健康だけでなく、精神的な側面において

【基礎知識】人間関係を構築・維持する方法|黙示録の四騎士とサウンド・リレーションシップ・ハウス理論

PERMA理論やSPIRE理論の「R(relationship)」や、心理的ウェルビーイングの6要素の1つが「積極的な他者関係(positive relationship)」などから分かるように、ウェルビーイングには人間関係が欠かせません。(詳細は、以下の記事を参照してください) 今日、よく参照される人間関係の基盤的な研究の1つに、J. Gottmanの研究があります。Gottmanは、恋人同士や夫婦を対象にして、その関係性の変化(構築・維持・崩壊)を20年以上追跡調査して